「ラーメンの残り汁にご飯を入れる」

かつての私にとって、それは至福の儀式でした。
麺をあらかた食べ終え、少し寂しくなったどんぶりに、真っ白なご飯を投入する。
スープを吸って黄金色に輝くご飯をかきこむ背徳感。
……ああ、書いていてお腹が鳴りそうです(笑)。
しかし、60代を迎えた今、私はこの愛すべき習慣を(ほぼ)封印しました。
なぜなら、今の私の体にとって、それが「トリプルパンチ級のダメージ」を与える行為だと知ってしまったからです。
きっかけは、ネットで見かけたあるニュース記事でした。
『やっぱり「シメのラーメン」は最悪だった…老化の研究者解説「そのとき体内で起きる糖化のWパンチ」とは』
お酒のシメについての記事でしたが、私の脳裏には即座に「ラーメンライス」が浮かびました。
「お酒+ラーメン」が最悪なら、「ラーメン+ライス」はどうなんだ?
嫌な予感を抱えつつ、私はいつもの相棒――私の健康管理を担う専属AI(CPO)「フェニックス・ライジング」を呼び出しました。
これは、ラーメンを愛する60代の男が、AIと共にその「毒性」を解剖し、それでも楽しむための「解毒術」を模索した記録です。
第1章:AIが断言した「細胞への自爆テロ」

AIが出してきたファクトチェックの結果は、私の淡い期待を木っ端微塵に砕くものでした。
記事の内容は「医学的に正確(Sランク)」。
飲酒後にラーメンを食べる行為は、単に太るだけでなく、体内で「老化物質(AGEs)」を大量生産する工場のスイッチを入れるようなものだというのです。
記事にある「糖化のWパンチ」とはこうです。
アルコール由来のパンチ: アルコールの毒素(アセトアルデヒド)がタンパク質を変性させる。
ラーメン由来のパンチ: 麺(糖質)が血糖値を爆上げし、タンパク質を焦げ付かせる。
この2つが同時に襲いかかることで、血管や肌の老化が劇的に加速する。
AIはこれを「分子レベルでの組織破壊」と表現しました。
恐る恐る、私は核心の質問を投げかけました。
「じゃあ、飲酒後にラーメンとご飯(ラーメンライス)を食べたらどうなる?」
AIの回答は、震え上がるほど冷徹でした。
「それはWパンチを超え、専門的な見地から言えば『細胞に対する自爆テロ』です」
自爆テロ……! そこまで言いますか(笑)。
AI曰く、肝臓がアルコール処理で手一杯の時に、純度の高い糖質爆弾(麺+飯)を投下すると、行き場を失った糖が全て内臓脂肪になり、血管は砂糖漬け状態になるとのこと。
「食べた瞬間に脂肪肝を合成するプロセス」だそうです。
昔、飲み会の帰りによくやっていたあれは、自分の体に対するテロ行為だったのかと、今更ながら冷や汗が出ました。
第2章:シラフでも危険?「ラーメンライス」の真実

「じゃあ、お酒を飲まなければいいんだろう?」
そう思いますよね?私もそう思いました。
シラフの昼飯なら、ラーメンライスも許されるはずだ、と。
しかし、AIの追撃は止まりません。
「飲酒時ほどの即効性はありませんが、『緩慢なるメタボリック・シンドロームへの直行便』であることに変わりはありません」
最大の理由は「塩分スポンジ現象」です。
ラーメン単体なら、スープを残せば塩分を回避できます。
しかし、ご飯をスープに入れる(私の一番好きな食べ方!)と、ご飯粒がスープを吸い込むスポンジとなり、強制的に塩分を完飲することになる。
これは高血圧や腎臓への負担を倍増させます。
AIは言いました。
「あなたがどうしてもラーメンライスを食べたいなら、止めはしません。
ただし、それは『毒を美味しく食べる』という覚悟を持って行ってください」
第3章:それでも食べるための「高度な防衛策」

とはいえ、人間ですもの。
たまには「毒」と分かっていても食べたい夜があります。
そこで私はAIと交渉し、「どうしても食べる時のための、ダメージ軽減プロトコル」を策定しました。
私の腎機能(eGFR)を守るための、科学的根拠に基づいた「悪あがき」です。
無機リン対策(Ca/Mgバリア): インスタント麺の添加物(無機リン)は腎臓の敵です。これを防ぐために、食べる直前に「カルシウム・マグネシウム」のサプリを飲みます。これらが腸内でリンと結合し、吸収をブロックしてくれます(AI判定:SSランク)。
塩分排出(カリウム・フラッシュ): 塩分を追い出すために、食後に「バナナ」を食べ、水をたっぷり飲みます。カリウムと水分で、塩分を尿として洗い流す作戦です。
代謝促進(クエン酸): 麺を食べる前に、「クエン酸」(または梅干し)を摂ります。糖の代謝を助け、体へのダメージを少しでも減らします。
AIはこの私の涙ぐましい努力に対し、「極めて高度で理にかなったバイオハックです」とお墨付きをくれました。
ただし、最後に釘を刺すことも忘れませんでした。
「どんなサプリよりも、『スープを残す』ことが最強の防御であることをお忘れなく」
結び:美味しいものは、たまに食べるから美味しい

結局のところ、ラーメンライスは「日常の食事」にしてはいけないのです。
それは、特別な日のご褒美か、あるいは覚悟を決めて挑む「背徳の遊び」であるべきだと。
60代。
若い頃のように、無茶はできません。
でも、知恵と工夫(とサプリ)を使えば、たまには羽目を外すこともできる。
「絶対にダメ」と禁止するのではなく、「どうすればダメージを減らせるか」を考える。
それが、大人の、そしてシニアの食との付き合い方なのかもしれません。
さあ、今夜はラーメンライス……ではなく、大人しく十割そばにしておきますか。
でも、いつかまた、あの黄金色の雑炊を食べる日のために、今日も私は水を飲み、体を整えておこうと思います。







