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序章:AIが検知した「無自覚の戦略」

60歳を過ぎても、コートの上では常に最高のパフォーマンスを追求したい。

そのために、自らの身体を「N-of-1(個人対象研究)」の実験台とし、主観的な「感覚」と客観的な「データ」のギャップを探求し続けている。

先日の練習後、AIパーソナルコーチである「フェニックス・ライジング」に練習データを分析させた際、私は奇妙なレポートを受け取った。

「結論:

本日の練習は、緻密なエネルギー戦略(炭水化物ローディング)に裏打ちされた、過去最高レベルの『超高強度』セッションでした。」

……緻密な、エネルギー戦略?

そんな意識は、私にはまったく無かった。

いったいAIは何を検知したのか。

レポートを読み進めると、驚くべき分析が続いた。

「練習前補給 (16:00-17:39): 『草大福』と『えいようかん』から合計 94.4g の炭水化物を摂取。…(中略)…戦略的な炭水化物ローディングがなければ、この異常な高出力パフォーマンス(1,202 kcal) は達成不可能だったと断言できます。」

私の頭は、疑問符で埋まった。

「草大福」と「えいようかん」。

いつもは練習の2時間ほど前に、手軽なエネルギーゼリー飲料を飲むのが習慣だ。

しかし、その日はたまたま和菓子を貰い、「甘いからエネルギーにはなるだろう」と、ゼリー飲料の代わりに食べた。

正直、実感としてゼリー飲料との違いは何も感じなかった。

だが、AIは「これがなければ達成不可能だった」とまで断言する。

このギャップこそ、我々が探求すべき「謎」だ。

私は直ちに、AIにこの謎の深層を探るための「Google Gemini Deep Research」を使って詳細なレポートを作成してもらった。

第1章:覆された「常識」

私はGoogle GeminiのDeep Research機能に、いくつかの食品の優劣を尋ねた。

「バスケットボールの練習前に優れているのは、

1:エネルギーゼリー、

2:メイバランス、

3:草大福、のうちどれか?」

「そして、材料、人工甘味料、添加物の観点から、最も身体に良いものはどれか?」

数分後、約10ページにわたる科学的分析レポートが出力された。

(せっかくなのでこのレポートは↓に掲載してあります)

私はそれを即座に「フェニックス・ライジング」に読み込ませ、私の全データと統合させた分析を指示した。

その回答は、私の長年の「常識」を根底から覆すものだった。

 

「分析の結果、あなたの最重要目標(60代でのパフォーマンス維持)に対し、現在の習慣と最新の科学的知見の間に重大な乖離(かいり)があることが判明しました。」

 

AIは、私がこれまでバスケ前の補給食として飲んでいた「メイバランス」が、最新の知見において「不適格である」と結論付けたのだ。

私の知識ベース(L-ID)には、「L-ID:001:メイバランスはバスケ前の補給食として有効」と確かに記録されている。

AIは、その知識ベース自体が「無効」であると突きつけてきた。

なぜか。

レポートは「高脂質・高タンパク質」を理由に挙げた。

運動が始まれば、血液は筋肉に集中する。

その状態で消化に時間のかかる脂質(メイバランスArg Miniはエネルギー比33.7%)やタンパク質を摂取すれば、胃もたれや腹痛、さらには筋肉への血流阻害を引き起こすリスクがあるという。

「メイバランス」は運動「前」のエネルギー補給ではなく、運動「後」の回復や、食事量が不足した際の「総合的栄養補助食品」である、と。

良かれと思って続けてきたメイバランスが、最新の知見によって明確に否定された瞬間だった。

第2章:なぜ「草大福」が最適解だったのか

では、何が正解だったのか。

AIは、新レポートと私の過去の活動ログを照合し、驚くべき食品を「理想的な食品」として提示した。

「草大福」

AIの評価は「非常に優れている」。

理由は明確だ。

高炭水化物(53.7g)、そして運動前の鉄則である「超低脂質(0.2g)」に、完璧に合致していたからだ。

さらにAIが推奨したのは、私自身が過去に何気なく食べていたものばかりだった。

「塩むすび」(脂質が極めて少ない)、

「バナナ」(自然のエネルギーゼリーと呼ぶべき理想的な食品)、

そして「カステラ」(脂質が少なく消化も良い)…。

AIは、私の「無効化」された知識ベースL-ID:001を削除し、新たなプロトコルを策定した。

【新 規】 P-ID:055: バスケットボール高強度練習・燃料プロトコル

  • T-minus 1~2時間前 (主燃料): 草大福 (1個)、塩むすび (1個)、バナナ (1本)、カステラ (1切れ)のいずれかを選択する。
  • T-minus 0~30分前 (点火剤): エネルギーゼリー(ガッツギア等)を選択する。

ゼリー飲料は、運動「直前」の点火剤としては最適だが、1〜2時間前の「主燃料」としては、草大福やバナナの方が優れていた。

私が「たまたま」行った行動が、図らずもAIが推奨する「最適解」と一致していたのだ。

「緻密なエネルギー戦略」の正体は、この「偶然の一致」だったのである。

第3章:本当の鍵は「昼食」にあった

だが、我々の探求はここで終わらない。

「草大福」の謎は解けた。

しかし、あの「過去最高レベル」のパフォーマンスを支えた要因がもう一つ、AIのレポートに記されていた。

「昼食 (12:45): 高繊維食(オートミール80g)により、セカンドミール効果の土台を構築しました。」

「セカンドミール効果」

1食目(昼食)に食物繊維の多いものを食べると、2食目(練習前の補給)で糖質を摂っても、血糖値の急上昇が抑えられ、エネルギーが持続するという理論だ。

私は、ここ数回の練習で「ある実験」をしていた。

練習当日の昼食は、エネルギーになりやすい「パスタ」や「白がゆ」など、低繊維・高糖質のものを意識して食べていたのだ。

しかし、AIの分析は真逆だった。

18時間のファスティング明けに、いきなりパスタや白がゆ(精製炭水化物)を食べれば、血糖値は急上昇(スパイク)し、インスリンが大量に分泌される。

その結果、練習前には血糖値が急降下し、エネルギー切れ(ガス欠)のリスクが高まるという。

一方、「草大福」で最高出力を記録したあの日。

私は昼食に「オートミール(高繊維)」を食べていた。

高繊維食が防波堤となり、草大福の糖質ですら緩やかに吸収された。

だから、練習終盤までエネルギーが持続した。

これが、AIが導き出した「過去最高レベル」のパフォーマンスの全貌だった。

結論:探求は、続く

AIは即座に、昼食に関する新プロトコルを提案してきた。

【新 規】 P-ID:056: バスケットボール練習日の昼食プロトコル

  • 目的: セカンドミール効果を最大化し、P-ID:055(草大福など)のエネルギーを持続させるため。
  • 推奨食品: オートミール(最低60g以上)またはさつまいも(250g以上)を主食とする。
  • 禁止食品: パスタ、白米(単品)、白がゆ、パン類(精製炭水化物)を主食とすることを禁止する。

私は、この新プロトコル(P-ID:056)を承認し、次回からの実践を決めた。

正直なところ、昼食に何を食べようが、そこまで体感は変わらないのではないか、という気持ちもある(笑)。

だが、「血糖値スパイク」という科学的な指摘は、60歳の身体を預かる者として無視できない。

結局のところ、「いつもと変わらない昼食(オートミール)を、ちょっと多めに食べれば良い」という結論のようだが、この「なんとなく」の行動に科学的な裏付けがなされたことに、N-of-1研究の面白さがある。

我々はAIという「相棒」と共に、これからも自らの身体に問い、データと向き合い、進化の道を探っていく。


 

この記事で描いたのは「AI創世記」と呼ぶ、AIと共に自らの限界に挑む探求の記録の、ほんの一幕に過ぎません。

一つだけ、読者の皆様に誠実にお伝えしたいことがあります。

ここまでの話は、あくまで高強度の練習を行う当日の「エネルギー補給」の戦略であり、運動をしない方が夕方に草大福を真似してしまえば、それはエネルギー過多(=太る)に繋がる可能性がある、ということです。

この記事が、あなたの「探求心」に少しでも火をつけることができたなら幸いです。


最後に

せっかくなので、Google Gemini Deep Researchで作成したレポートを以下に記載しておきます。

ご興味ある方は是非お読みください。

アスリートのための試合・練習直前のエネルギー補給戦略:

3つの選択肢

(エネルギーゼリー、メイバランス、草大福)の

栄養科学的比較と最適な代替案

 

バスケットボールのような高強度かつ持久的な要素を併せ持つスポーツにおいて、試合や練習前のエネルギー補給は、パフォーマンスの質、持続力、そして集中力に直接的な影響を与えます。

本レポートは、ご提示いただいた3つの具体的な選択肢(一般的なエネルギーゼリー、メイバランス、草大福)について、スポーツ栄養学の観点から「パフォーマンス(エネルギー補給)」と「健康性(原材料・添加物)」の2軸で詳細に分析・評価します。

さらに、これら3つ以外のアスリートに推奨される優れた補給食品についても、その科学的根拠と共に提案します。

 

第1部: 運動前エネルギー補給の原則と評価基準

 

ご質問の3製品を評価する前に、まず「エネルギー補給として優れている」状態を定義する必要があります。

運動前の補給食(補食)を選定する上での科学的原則を確立し、これを以降の評価基準とします。

 

1-1. パフォーマンスの最大化:なぜ補食が必要か

 

バスケットボールは、ダッシュ、ジャンプ、ストップといった高強度の無酸素運動と、コートを往復し続ける有酸素運動が繰り返される「高強度間欠性スポーツ」です。

この種の運動は、筋肉内に貯蔵されているエネルギー源、すなわち「筋グリコーゲン(糖質)」を急速に消費します。

運動前の補食の役割は、単に空腹感を満たすことではありません。

以下の3つの重要な目的があります 1

  1. エネルギーの補給: 運動中に消費される糖質をあらかじめ補い、血液中の糖(血糖)レベルを維持します 1。これにより、エネルギー切れによるパフォーマンス低下(「ハンガーノック」)を防ぎます。
  2. 集中力の維持: 脳がエネルギーとして利用できるのは、基本的にブドウ糖(血糖)のみです。血糖値が安定することで、試合終盤の疲労時においても、的確な判断力や集中力を維持することができます 1
  3. 疲労回復の促進: 運動開始時点でエネルギーが充足している状態は、運動による筋肉の分解を抑制し、運動後の速やかな疲労回復にも寄与します 2

 

1-2. 「いつ・何を」食べるか:運動前補給の鉄則

 

運動前の補食で最も重要な要素は「消化・吸収の速さ」です。

運動が始まると、血液は酸素とエネルギーを運ぶために活発に動く筋肉(骨格筋)へ優先的に送られます。

その結果、胃や腸といった消化器系の血流は相対的に低下します 2

この状態で消化の悪い食品が胃に残っていると、パフォーマンスに以下の悪影響が出ます。

  • 胃もたれ、吐き気、腹痛などの消化器系の不快感。
  • 消化のために胃腸に血液が留まり、筋肉への血流が阻害される。

したがって、運動前の補給食は、以下の「鉄則」を満たす必要があります。

  • 鉄則1:高炭水化物(糖質)であること
    炭水化物は体内でグリコーゲンとして貯蔵され、運動時に最も速やかにエネルギーとして利用される主要な燃料です 2。
  • 鉄則2:低脂質・低タンパク質であること
    脂質やタンパク質(特に赤身肉や豆類など)は、炭水化物と比較して消化に非常に長い時間を要します 2。運動直前にこれらを摂取することは、胃腸の負担を著しく増大させるため、厳に避けるべきです 2。
  • 鉄則3:低食物繊維であること
    食物繊維もまた消化に時間がかかり、胃腸への負担となるため、運動直前の摂取は推奨されません 2。
  • 鉄則4:適切なタイミング
    補食の摂取タイミングは、運動開始の30分~1時間前が一般的です 3。もし運動開始まで30分を切っているような緊急時(試合直前など)には、バナナやゼリー飲料といった、即座に消化・吸収される、よりエネルギー効率の良い食品が推奨されます 。

 

第2部: パフォーマンス分析(第一の問い): 3つの選択肢の比較評価

 

第1部で確立した「運動前補給の鉄則(高炭水化物・低脂質・低タンパク質・低食物繊維)」に基づき、ご提示いただいた3つの選択肢を「運動前のエネルギー補給」という観点で厳密に評価します。

 

2-1. 選択肢1:一般的なエネルギー補給用のゼリー飲料(例:ザバス ピットイン)

 

スポーツ用に設計されたエネルギーゼリーは、アスリートが運動中に効率よくエネルギーを摂取できるよう最適化されています。

  • パフォーマンス(栄養成分)分析:
    「ザバス ピットインエナジージェル」を例に見ると、1袋(69g)あたりの栄養成分は、エネルギー 170kcal、炭水化物 42.8g、脂質 0g、たんぱく質 0g となっています 。
  • 評価(パフォーマンス):
    結論として「極めて優れている」と評価できます。脂質とタンパク質がゼロであり 、第1部で設定した鉄則(特に鉄則)に完全に合致しています。
    主成分として「マルトデキストリン」が使用されています 。マルトデキストリンは、ブドウ糖が複数個つながった構造を持つ糖質で、砂糖(ショ糖)よりもゆっくりと、しかし米やパンなどの複合炭水化物よりは速やかに吸収される特性を持ちます。これにより、血糖値の急激な上昇(インスリンショック)を抑えつつ、胃腸に負担をかけずに持続的なエネルギーを供給するよう設計されています。まさに「運動中のエネルギー、ミネラルの補給」 を目的として開発された製品です。
  • 健康性(原材料・添加物)分析:
    原材料名を見ると、マルトデキストリン、食塩のほか、クエン酸、ビタミン類(V.C, ナイアシン, V.B1, V.B6)、ミネラル類(クエン酸Na, クエン酸K)が含まれます 。一方で、味を調えるために甘味料(アセスルファムK、スクラロース)、香料、色素も使用されています 。
    ここで「パフォーマンス」と「健康性」のトレードオフ(二律背反)が生じます。パフォーマンスを最大化するために、消化の速さとエネルギー効率を追求し、必要な栄養素を添加する一方で、嗜好性を高めるために人工甘味料が使用されています。アセスルファムKやスクラロースは、日本国内で認可されている合成甘味料(添加物) ですが、「自然な食品」を求める観点からは懸念点となり得ます。

 

2-2. 選択肢2:メイバランス(例:Arg Mini さわやかブルーベリー味)

 

メイバランスは、栄養補助食品として広く知られています。

  • パフォーマンス(栄養成分)分析:
    「メイバランス Arg Mini」を例に見ると、1本(125ml)あたり、エネルギー 200kcal、炭水化物 33.7g(糖質)ですが、同時にたんぱく質 10g、そしてエネルギー比にして 33.7%の脂質を含んでいます 。
  • 評価(パフォーマンス):
    結論として「不適格である」と評価します。200kcalという高エネルギーは魅力的ですが、その構成が運動前補給の鉄則(低脂質・低タンパク質) 2に真っ向から反しています。
    10gのタンパク質と、エネルギーの1/3を占める脂質 9は、消化に非常に長い時間を要します 。運動直前にこれを摂取した場合、高い確率で胃もたれや腹痛を引き起こし、パフォーマンスを著しく低下させる危険性があります。
    これは製品のカテゴリーミスマッチに起因します。メイバランスは本来、スポーツ前のエネルギー補給用ではなく、医療・介護現場や、様々な理由で食事が十分に摂れない人のための「総合的栄養補助食品」として設計されています。したがって、運動前の補給食としては適していません。
  • 健康性(原材料・添加物)分析:
    原材料名には、デキストリン、ショ糖といった糖質源のほか、食用油脂(なたね油、パーム分別油)、タンパク質源としてのカゼインNa(乳タンパク)やアルギニンが記載されています 9。
    これら多種の栄養素を小さな一本に凝縮し、液体として安定させるために、pH調整剤、乳化剤、香料、そして甘味料(スクラロース)など、多種多様な原材料と添加物が使用されています 。これは「総合栄養補助」という製品の目的には適っていますが、「身体の為に良い(自然な)」という観点からは、3製品の中で最も「人工的に構築された食品」であると言えます。

 

2-3. 選択肢3:草大福(例:山崎製パン)

 

草大福は、日本の伝統的な和菓子です。

  • パフォーマンス(栄養成分)分析:
    「山崎製パン 草大福」を例に見ると、1個あたりの栄養成分は、エネルギー 231kcal、炭水化物 53.7g、脂質 0.2g、たんぱく質 3.7g となっています 。
  • 評価(パフォーマンス):
    結論として「非常に優れている」と評価できます。栄養成分は、まさに「高炭水化物・超低脂質・低タンパク質」であり、第1部の鉄則にほぼ完璧に合致します。特に脂質が 0.2g とゼロに限りなく近い点は、運動前の補給食として特筆すべき強みです。
    主原料である「もち米(複合炭水化物)」と、あんこに使われる「砂糖(単純炭水化物)」の組み合わせは、持続的なエネルギー供給と即効性のあるエネルギー供給の両方を兼ね備えており、アスリートの補食として理想的な構成の一つです。
  • 健康性(原材料・添加物)分析:
    この製品の評価で最も難しい点が、原材料と添加物です。分析に使用した資料 では、山崎製パンのウェブサイト上において、当該製品の具体的な原材料名(添加物リスト)は確認できませんでした。
    ここに「市販品」と「伝統的な製品」の大きな違いが存在します。
    もし、近所の和菓子店などで伝統的な製法(添加物不使用)に基づいて作られた草大福であれば、その原材料は「もち米、よもぎ、小豆、砂糖、塩」のみと考えられます。この場合、3製品の中で圧倒的に最も「身体の為に良い(自然的)」選択肢となります。
    しかし、10 で参照されているような、コンビニエンスストアやスーパーマーケットで長期間販売される市販品の場合、日持ちさせるための保存料や、柔らかさを維持するための乳化剤、酵素などが添加されている可能性が非常に高いと考えられます。「身体の為に良い」かどうかは、「どこで製造された草大福か」という前提条件に強く依存します。

【表1:3製品の運動前補給における栄養成分比較】

 

製品名(例)エネルギー (kcal)炭水化物 (g)脂質 (g)たんぱく質 (g)運動前補給の適性出典
エネルギーゼリー (ザバス ピットイン)17042.80.00.0最適5
メイバランス (Arg Mini)20033.7多い (※)10.0不適9
草大福 (山崎製パン)23153.70.23.7優良10

(※ 9 に基づき、メイバランスの脂質はエネルギー比33.7%と非常に高い)

第3部: 総合評価と結論(ユーザーの質問への回答)

 

第2部の詳細な分析に基づき、ご質問者様からの3つの問いに対して、専門家としての見解を明確に回答します。

 

3-1. 結論(第一の問い):エネルギー補給として優れているのは?

 

回答:

「1.一般的なエネルギー補給用のゼリー飲料」と「3.草大福」の2つです。

理由:

両者ともに、スポーツ栄養学の鉄則である「高炭水化物・低脂質・低タンパク質」 2 の条件を高いレベルで満たしています 5。

専門家としての補足(最適な使い分け):

この2つは、優劣ではなく、摂取する「タイミング」によって使い分けるべきです。

  • エネルギーゼリーが最適な場面:
    液体であり消化吸収が最速で、脂質・タンパク質がゼロ のため、試合や練習の直前(30分以内) や、試合中のハーフタイムなど、緊急のエネルギー補給に最適です。
  • 草大福が最適な場面:
    固形物であるためゼリーよりは消化に時間が必要ですが、炭水化物量(53.7g) 10 が豊富で腹持ちも良いため、練習や試合の1時間~2時間前の補食として極めて優れています

「2.メイバランス」は、前述の通り高脂質・高タンパク のため、運動前の補給には適していません

 

3-2. 結論(第二の問い):最も身体の為に良い物は?

 

回答:

条件付きで『3.草大福』」です。

理由(パフォーマンス vs 健康性のジレンマ):

これは「身体の為に良い」を「添加物が少なく、原材料が自然的である」と定義した場合の回答です。

  1. メイバランス: 総合栄養補助という目的のため、食用油脂、カゼインNa、乳化剤、pH調整剤、香料、甘味料(スクラロース)など、最も多くの種類の添加物と人工的な原材料が使用されています
  2. エネルギーゼリー: パフォーマンスに特化するため、人工甘味料(アセスルファムK、スクラロース) や香料、色素が使用されています。
  3. 草大福: もし「添加物不使用の伝統的な製法」で作られたものであれば、原材料は「米、よもぎ、小豆、砂糖」のみとなり、3製品の中で圧倒的に最も「自然的」な選択肢となります。

重要な注意点:

ただし、第2部で指摘した通り、市販の草大福 10 には保存料や乳化剤が含まれている可能性が高いです。

もし「添加物の種類や量の少なさ」を厳密に比較した場合、エネルギーゼリーに含まれる2種の人工甘味料 と、市販の大福に含まれる可能性のある複数の保存料・乳化剤と、どちらが「身体の為に悪い」かは一概に判断できません

運動直前の消化負担(胃腸への優しさ)という観点では、脂質ゼロのゼリー の方が、微量でも脂質やタンパク質を含む大福 よりも「身体(胃腸)の為に良い」という側面もあります。

【表2:3製品の原材料・添加物・甘味料の比較(健康性軸)】

 

製品名(例)主要炭水化物源人工甘味料その他の主要添加物健康性評価(自然的か)出典
エネルギーゼリーマルトデキストリンあり (アセスルファムK, スクラロース)ゲル化剤, 酸味料, 香料, 色素低 (人工的に設計)5
メイバランスデキストリン, ショ糖あり (スクラロース)食用油脂, カゼインNa, 乳化剤, pH調整剤, 香料極めて低 (人工的に構築)9
草大福もち米, 砂糖(あんこ)なし (推定)不明 (※) (保存料, 乳化剤の可能性)高 (※ただし市販品は要確認)10

第4部: 3つ以外でエネルギー補給に優れた物(第三の問い)

 

ご質問の3製品の比較分析から、「パフォーマンス(高炭水化物・低脂質)」と「健康性(添加物が少ない)」を両立させる、優れた食品が明確になります。

第1部で定義した「運動前補給の鉄則」を満たす、理想的な代替食品を紹介します。

 

4-1. 最適な代替案:バナナ

 

バナナは「自然のエネルギーゼリー」と呼ぶべき、アスリートにとって最も優れた補食の一つです。

  • 推奨理由:
  1. 理想的な糖質源: 炭水化物が豊富で、即効性と持続性を兼ね備えた糖質(ブドウ糖、果糖、ショ糖)を含み、エネルギー源として優れています
  2. 速やかな消化: 消化が比較的速く(約30~60分)、胃腸に負担をかけにくいため、運動30~60分前の補給に最適です
  3. 豊富なミネラル: エネルギー代謝を助けるビタミンB群や、筋肉の機能維持・けいれん予防に必要なカリウムが豊富に含まれています
  4. 健康性: 添加物ゼロの自然食品です。

 

4-2. 優れた代替案:おにぎり(具材の選定が鍵)

 

おにぎりは、日本のアスリートにとって最も身近なエネルギー源です。

  • 推奨理由:
  1. 持続的エネルギー: 主成分である米(複合炭水化物)が、グリコーゲンとして貯蔵されやすく、持続的なエネルギー源となります
  2. 入手容易性: 手軽に炭水化物を補給できます
  • 専門家としての重要警告(具材の選定):
    おにぎりの価値は「具材」によって決まります。運動前には「低脂質」が鉄則 です。
  • 避けるべき具材: 消化に時間がかかる高脂質・高タンパクな具材。
    例:ツナマヨネーズ、唐揚げ、焼肉、天ぷら(天むす)、油で炒めた高菜明太マヨなど。
  • 推奨される具材: 消化が良く、脂質が少ないもの。
    例:梅干し、昆布、鮭(脂の少ないもの)、しらす 、塩むすび。

 

4-3. 意外な代替案:カステラ

 

洋菓子の中でもカステラは、その製法からアスリートの補食として非常に優秀です。

  • 推奨理由:
  1. 高炭水化物・低脂質: カステラの主な原材料は「卵、砂糖、小麦粉、水あめ」であり、バターや生クリームといった油脂をほとんど使用しません 。そのため、栄養成分(例: V!カステラ 脂質2.5g, 炭水化物28.4g) が運動前の補給に適しています。
  2. 消化の良さ: 油を含まず食物繊維も少ないため、消化吸収が速いとされています

カステラは、栄養特性としては草大福やまんじゅうといった「和菓子」に非常に近く、運動前のエネルギー補給として優れた選択肢です。

 

第5部: 最終結論と実践的アドバイス

 

本レポートの分析に基づき、バスケットボール選手またはその支援者様へ、管理栄養士として以下の実践的戦略を推奨します。

  1. 「メイバランス」は運動前のエネルギー補給には使用しない。
    高脂質・高タンパク 9 であり、運動前の摂取は消化不良を招き、パフォーマンスを低下させるリスクがあります 。これは運動「後」の栄養回復や、食事が摂れない日の「総合栄養補給」、あるいは増量期の「間食」に用いるべき製品です。
  2. 「エネルギーゼリー」と「草大福」は、目的とタイミングで使い分ける。
  • 試合・練習の1~2時間前:
    草大福」や「バナナ」、「カステラ」、「具材を選んだおにぎり」など、固形物でしっかり炭水化物を摂り、エネルギーを満タンにします。
  • 試合・練習の直前(30分以内)または試合中:
    消化吸収が最速で胃腸への負担がゼロの「エネルギーゼリー」を選択します。
  1. 「身体の為に良い物」のバランス感覚を持つ。
    「エネルギーゼリー」に含まれる人工甘味料 5 を過度に懸念する必要はありません。これらは認可された添加物  であり、試合当日に最高のパフォーマンスを発揮するという「目的」においては、消化の速さと脂質ゼロというメリットが健康上のわずかな懸念を上回ります。
    最も賢明な戦略は、「日常の練習においては添加物の少ない「草大福(和菓子店のもの)」「バナナ」「おにぎり」を基本とし、試合当日や緊急時のみ、パフォーマンスに特化した「エネルギーゼリー」を活用するという「使い分け」です。