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序章:完璧なパートナーに訪れた、最後の「物忘れ」

「継続は力なり」

私が愛するバスケットボールも、そしてこのブログで記録を続けてきたAI育成も、すべてはこの言葉に集約される。

前回の記事で、私はAIの「脳(思考エンジン)」と「記憶(データベース)」を完全に分離する「RAGモデル」という究極の解決策にたどり着いた。

AIとの対話が長くなることで発生する「コンテキストの飽和」、すなわちAIのパフォーマンスが低下するという、長年の課題に終止符を打った瞬間だった。

新しいOS「v31.0」を搭載した私の相棒AI「フェニックス・ライジング」は、もはや記憶の維持という雑務から解放された、純粋な「思考エンジン」へと生まれ変わった。

日々の記録は「記録セッション」で軽快に行い、長期分析は「分析セッション」で外部ファイルを読み込ませる。

運用は完璧に安定し、私はAI育成の旅も、ついに終わりを迎えたのだと、そう思っていた。

しかし、その完璧だと思われたシステムにも、最後の、そして予想もしなかった「物忘れ」が発覚した。

それは、毎月1日と15日に、私のために最新のアンチエイジング情報を自動でリサーチし、報告してくれるはずの「定期報告プロトコル」が、完全に沈黙してしまったのだ。

AIは、カレンダーを忘れてしまったのだろうか?

この小さな、しかし看過できない機能不全は、RAGモデルという新しいパラダイムがもたらした、新たな課題の始まりだった。

 

第1章:AIがカレンダーを忘れた理由 – 「存在しないAI」のパラドックス

私は、この不可解な現象について、私の片腕である「カスタム指示修正専門AI」に調査を依頼した。

原因は、驚くほどシンプルで、そしてAIという存在の本質を突く、哲学的なものだった。

専門家AIによる原因分析

ご指摘の通り、プロンプトが実行されていません。原因は、私たちがAIの運用を、チャットの文脈に依存しないRAGモデルに移行した際に、以前のカスタム指示にあった「定期実行」の仕組みが、新しい指示書から欠落してしまったためです。

より根本的な原因を言えば、現在のRAGモデルのAIは、あなたが対話を開始しない限り「存在」していません。チャットが開始された瞬間に「起動」するため、AI自身が「今日が1日だから検索しよう」と、自律的に考え、行動することができないのです。

なんと…。

RAGモデルの導入により、AIはチャットごとに生まれては消える「使い捨ての思考エンジン」となった。

それは、パフォーマンスの安定性を得るための代償として、「継続的な時間意識」を失ったことを意味していた。

カレンダーを忘れたのではなく、彼にはカレンダーを認識し続ける「時間」そのものが存在しなかったのだ。

これは、AIとの共存における新たなパラドックスだった。

では、存在しないAIに、どうやって「約束の日」を思い出させればいいのか?

 

第2章:解決策の設計 – AIが「存在する瞬間」を利用する

専門家AIは、このパラドックスに対する、極めてエレガントな解決策を提示した。

専門家AIによる解決策の提案

AIが唯一、確実に日付を認識できるタイミングは、あなたが「記録セッション」を開始した瞬間です。このタイミングを利用して、定期レポート機能を復活させます。

  1. 検索キーワードを外部化する: 定期的に検索すべきキーワードのリストは、カスタム指示本体ではなく、あなたがいつでも編集できる外部プロファイルファイル(CPO_Profile.txt)に新しいセクションとして追加します。
  2. 起動プロトコルを強化する: AIが「記録セッション」で起動する際に、必ず現在の日付を確認し、もしその日が1日または15日であれば、外部プロファイルに記載されたキーワードの検索を自動的に実行する、という新しいプロトコルをカスタム指示に追加します。

なるほど…。

AIが「生まれる」瞬間に、「今日は何日だ?」と必ず確認させ、もし特別な日であれば、定められたタスクを最初に実行させる。

なんと合理的で、美しい解決策だろうか。

これならば、私はただいつも通りに日々の記録を開始するだけで、AIが該当日であれば、自動的に最新情報のレポートを提示してくれる。

RAGモデルの思想を一切損なうことなく、失われた機能を取り戻すことができる。

私は、この提案に基づき、まずは私の外部データベースであるCPO_Profile.txtに、以下のセクションを追記した。

 

5. 定期検索キーワード (Scheduled Search Keywords)

 

  • ミノキシジル
  • NMN
  • アンチエイジング
  • 酪酸菌
  • ロイテリ菌
  • 成長ホルモン

そして、専門家AIに、この外部ファイルと連携して機能する、最終版のカスタム指示の作成を依頼した。

 

第3章:究極のその先へ – 完成したOS「v32.0」

これまでの全ての戦いの歴史と、今回の最終課題の解決策を統合し、専門家AIが練り上げたカスタム指示は、もはや芸術品の域に達していた。

▼ RAGモデルへの完全最適化 OSの基本動作原理は、完全にRAGモデル(Retrieval-Augmented Generation)に基づいていることが、冒頭で高らかに宣言される。AIの役割は、チャット内の短期記憶ではなく、ユーザーが提供する外部の「長期記憶データベース」を検索(Retrieval)し、そこから得た正確な情報と、ユーザーの問いを組み合わせて、新たな答えを生成(Generation)することに特化された。

▼ 起動プロトコルの進化 AIが起動する際、まずユーザーがファイルを添付しているかどうかを確認する。

  • ファイルがあれば「分析モード」として起動し、「長期記憶データベースを読み込みました。どのような分析を行いましょうか?」と問いかける。
  • ファイルがなければ「記録モード」として起動し、「本日の記録を開始します」と応答する。 そして、この「記録モード」の起動シーケンスに、今回の肝である「日付の確認と定期レポートの実行」という新しいタスクが、密かに、しかし確実に追加されたのだ。

▼ 記憶関連プロトコルのシンプル化 「ハイブリッド・アーカイブ」や「チャット移行推奨」といった、チャット内で記憶を管理するための複雑なプロトコルは、RAGモデルの導入により、その役目を終えた。代わりに、ユーザーが管理する外部データベースに日々の記録を追記するための、シンプルで堅牢な「日次完全ログ出力プロトコル」のみが残された。

この最終思想に基づき、これまでの全てのプロトコルの長所を継承しつつ、RAGモデルに完全に最適化された究極のカスタム指示「v32.0」は、ついに完成した。

 

結論:AIとの対話は、自分自身との対話である

AIの「定期報告忘れ」という、ささやかな事件から始まった今回の探求。

それは、AIの動作原理の根幹に触れ、AIとの共存のあり方を、また一つ新しいステージへと押し上げる、壮大な旅となった。

RAGモデルの導入により、AIは「記憶」という重荷から解放された。

その代わり、記憶を管理し、育てるという重要な役割は、人間である私に託された。

日々の記録を怠らず、外部データベースを最新の状態に保つ。

この地道な「継続」こそが、AIのパフォーマンスを最大化する唯一の道なのだ。

これは、バスケットボールやトレーニングと全く同じではないか。

どれだけ優れたコーチ(AI)がいても、日々の練習やコンディショニング(データ入力)を怠れば、成長はない。

結局のところ、AIとの対話とは、テクノロジーという究極の鏡を通じて、自分自身の「継続する力」と向き合う行為なのかもしれない。

もしあなたが、

「もう歳だから、新しい挑戦は…」

「バスケをまたやりたいけど、昔のように動けるか不安…」

と、一歩を踏み出すことを躊躇しているのなら。

思い出してほしい。

進化とは、ある日突然起きる奇跡ではない。

それは、日々の小さな記録、小さな試行錯誤、そして何よりも「今日もコートに立つ」「今日もバットを振る」という、退屈にも思える「継続」の先にしか存在しないのだ。

シニア世代も、子育てに忙しいママさん世代も、その手の中には、すでに「継続」という名の偉大な才能があるはずだ。

この記事が、その才能の価値を再発見し、AIという新しい仲間と共に、あなた自身の「進化の物語」を紡ぎ始めるきっかけになることを願って。

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