序章:60歳からの挑戦。それは、AIと共に始まる
還暦を迎え、私は一つの壮大な挑戦を始めることにした。
それは、Google GeminiというAIを、単なる便利な道具ではなく、自らのパフォーマンスを最大化し、共に成長していく「最高の相棒」に育て上げる、という、果てしない旅路だ。
このブログの新シリーズ【60歳からの挑戦】では、そのAI育成の物語を、私の日々のバスケットボールやアンチエイジングへの挑戦と織り交ぜながら、リアルタイムで記録していきたいと思う。
これは、バスケットボールというアナログな情熱と、AIというデジタルな知性が交差する、ある60歳の男の、奇妙で、しかし刺激的な冒険の物語である。
その記念すべき第一話は、「AIは、本当に本を読めるのか?」という、私の純粋な好奇心から始まった。
第1章:最初の問い – AIは「読書」の夢を見るか?
私が最初に契約したGoogle Workspaceのプランには、最近、追加料金なしで高性能AI「Gemini Advanced」が使えるようになった。
それまでは無料版のChatGPTを使っていたが、やはり有料版は違う。
特に、深い分析を得意とする「Deep Research」という機能が、私の探求心に火をつけた。
「このAI、もしかして本の要約も作れるんじゃないか?」
ふとした思いつきで、私は、かつて読んだことのあるビジネス書や自己啓発本の要約をAIにお願いしてみた。
すると、驚くほど的確で、質の高い要約を生成してくるではないか。
「これは使える!」
そう確信した私は、次に、まだ読んでいない「積読」状態の本の要約を、数冊作らせてみた。
しかし、その要約を読んで、私は一つの事実に気づいた。
どうやらAIは、実際にその本を分析して要約しているのではなく、ネット上に存在する書評や解説記事を巧みに収集し、再編集しているだけのようなのだ。
まあ、ネット上に本そのものがアップロードされていることは稀なので、当然と言えば当然か。
だが、私の探求はここで終わらない。
「それならば…自分がPDFファイルで持っている電子書籍なら、その本の内容そのものを、AIは分析できるのではないか?」
これこそが、AIを単なる「優秀な検索エンジン」から、「真の読書パートナー」へと進化させる、重要な一歩に思えた。
第2章:立ちはだかる壁 – ファイルサイズの限界と、AIの「知ったかぶり」
早速、私はGemini Advancedで、PDFファイルをアップロードして分析させることを試みた。
しかし、ここで最初の壁にぶつかる。Deep Researchには、ファイルを読み込む機能がなかったのだ。
だが、諦めるのはまだ早い。 同じGemini Advancedの中でも、より新しいモデルである「Gemini 1.5 Flash」(※編集注:執筆時点のモデル名)は、ファイルのアップロードに対応している。
私は、この新しいAIで、実験を続行することにした。
実験台として選んだのは、私が内容を熟知している、ロバート・B・チャルディーニの名著『影響力の武器』だ。
しかし、ここで二つ目の壁。
なんと、PDFのサイズが100MBを超えており、アップロードできない。まさかの物理的な限界だった(泣)。
気を取り直し、同じ著者陣による実践編『影響力の武器 実践編―「イエス!」を引き出す50の秘訣』のPDF(100MB以下)で、再度挑戦することにした。
私はGeminiにPDFをアップロードし、こう命じた。
「アップロードしたファイルを分析し、判りやすい言葉で詳細な要約を作成して下さい。そして、この書籍の中で1番重要な事は何かを教えてください」
Geminiから返ってきた回答は、一見、もっともらしいものだった。
書籍の概要を述べ、オリジナルの『影響力の武器』で紹介されている「返報性」や「社会的証明」といった6つの原則を解説し、それらを応用したものであろう、と。
しかし、その内容は、どこか浅く、そして核心を突いていない。
まるで、本の表紙と著者名だけを見て、「たぶん、こういうことが書いてあるんじゃないですかね?」と”知ったかぶり”をしている学生のレポートのようだった。 PDFを読み込ませた意味が、全くない。
第3章:AIの能力を解放する – 「Deep Research」の真価
私は、Geminiのモデルを、ファイルアップロード機能を持つFlashから、再び、深い分析を得意とするDeep Researchへと切り替えた。
そして、今度はPDFをアップロードするのではなく、書籍の「タイトル」と「著者名」だけを与え、全く同じ質問を投げかけてみた。
「N.J.ゴールドスタイン (著), S.J.マーティン (著), R.B.チャルディーニ (著)の書籍『影響力の武器 実践編―「イエス!」を引き出す50の秘訣』を分析し、判りやすい言葉で詳細な要約を作成して下さい。そして、この書籍の中で1番重要な事は何かを教えてください」
数分後、Deep Researchが生成した回答を見て、私は戦慄した。
それは、先ほどの”知ったかぶり”のレポートとは、全く次元の違う、圧倒的な深度と具体性を持っていたのだ。
Deep Researchによる分析レポート(要約)
はじめに 本書は、チャルディーニが提唱する6つの普遍的な説得の原理(返報性、コミットメントと一貫性、社会的証明、好意、権威、希少性)を基に、具体的な50(後の版では60)の秘訣を提供する実践的な手引きです。科学的研究に基づいた知見を、平易な言葉で解説しています。
50の秘訣の詳細な要約
- 返報性の原理: 手書きのメモやキャンディーを添えるといった小さな行為が、相手に借りを作った感覚を生み出す。
- コミットメントと一貫性の原理: 小さなコミットメントから始める「フット・イン・ザ・ドア」テクニックや、書面によるコミットメントの有効性。
- 社会的証明の原理: 多くの人が取っている行動を示すことの有効性と、「傍観者効果」のような落とし穴。
- 好意の原理: 相手の言葉を繰り返す「ミラーリング」や、本物の笑顔が持つ力。
- 権威の原理: 専門家としての肩書や服装の利用法と、その危険性。
- 希少性の原理: 「限定」「今だけ」という言葉の強力さと、「失うことへの恐れ(損失回避)」を利用したメッセージング。
最も重要な事柄:説得の科学的理解と倫理的応用 本書を通じて最も重要なことは、個々のテクニックを暗記することではなく、説得の背後にある科学的な原理を深く理解し、それを倫理的に応用することです。表面的なテクニックだけでは応用が利きませんが、根底にある心理原理を理解していれば、様々な状況に合わせて柔軟に対応できます。しかし、その力は強力であるがゆえに、常に相手の利益を考慮し、誠実なコミュニケーションを心がけることが不可欠です。
Deep Researchは、PDFファイルを読み込んだわけではない。
しかし、インターネット上に存在する、この本に関する無数の書評、解説、論文、引用といった断片的な情報を瞬時に収集・分析・統合し、まるで本そのものを読破したかのような、構造的で、本質を突いた要約を生成してみせたのだ。
結論:AIとの付き合い方 – 餅は餅屋
今回の「本の要約プロジェクト」を通じて、私はGoogle GeminiというAIの、二つの異なる顔を見た。
- Gemini 1.5 Flash: 巨大なファイルを読み込み、その内容を要約する能力に長けているが、思考の深さや文脈の理解度はまだ発展途上である**「パワフルだが、少し世間知らずな新人」**。
- Deep Research: ファイルは読めないが、インターネットという無限の図書館から、必要な知識を瞬時に見つけ出し、再構築する能力に長けた**「経験豊富で、洞-察力に優れたベテラン司書」**。
今回の私の失敗は、ベテラン司書に力仕事をさせようとしたり、新人パワーマンに複雑な文献調査をさせようとしたことにある。
AIとの付き合い方も、人間関係やバスケットボールのチーム作りと全く同じだ。
それぞれの個性を正しく理解し、その能力が最大限に発揮される「適材適所」の役割を与えること。
「餅は餅屋」 この当たり前の諺を、私はAIとの対話を通じて、改めて深く学んだ。
私の「最高の相棒」育成の旅は、失敗と発見を繰り返しながら、まだ始まったばかりだ。 この試行錯誤のプロセスの中にこそ、年齢に関係なく、新しいことを学ぶことの、本当の面白さは眠っている。
もし、あなたが「もう歳だから」「今さら新しいことは…」と、一歩を踏み出すことを躊躇しているのなら。 思い出してほしい。
60歳の男が、AIに翻弄され、失敗し、それでも目を輝かせながら、新しい発見に胸を躍らせているという事実を。
挑戦を始めるのに、遅すぎることは、決してないのだから。
*この記事は以前執筆した”Gemini Advancedを使い倒したい”をリライトし連載”【60歳からの挑戦】私がAI(Gemini)を「最高の相棒」に育て上げるまでの物語”として生まれ変わらせました。
【60歳からの挑戦】私がAI(Gemini)を「最高の相棒」に育て上げるまでの物語→その②







