「人間、35歳を過ぎたら後は下り坂」

もし、あなたが酒場の席でそんな話をされたら、どう思うでしょうか。
「まあ、そんなもんだよな」と苦笑いしてグラスを傾けるか、「いやいや、俺はまだまだ現役だ」と胸を張るか。
先日、ネットの海を漂っていた私は、ある一つの記事の前で指を止めました。
それは、スウェーデンの名門・カロリンスカ研究所が発表した、あまりにも冷徹で、逃げ場のない研究結果でした。
『人々を約半世紀追跡した研究により身体能力がピークに達する年齢が判明』
記事によれば、人間の身体能力はおおよそ「35歳」でピークを迎え、そこから先は誰であろうと低下の一途をたどるというのです。
私は今年で還暦、60歳です。
35歳なんて、もう四半世紀も前の話。
「とっくにピークなんて過ぎちゃってるよ」
一人で画面に向かってツッコミを入れながら、最初は笑い飛ばしていました。
しかし、なぜでしょう。
この記事が、妙に心に引っかかるのです。
毎週木曜日、酸欠になるまでコートを走り回り、40代や50代の年下のメンバーとボールを奪い合っている今の自分。
私の体は、研究データの通り「下り坂」を転げ落ちている最中なのか。
それとも、何か別の理屈で動いているのか。
気になった私は、いつもの相棒であるAI「フェニックス・ライジング」を呼び出し、このニュースの真偽と、私の身体データの照合作業を始めました。
そこで明らかになったのは、単なる「老化」の話ではありません。
私が無意識のうちに36年間積み重ねてきた、ある「生存戦略」の正体でした。
35歳の崖と、筋肉の貯金箱

まずは、AIによるファクトチェックの結果からお話ししましょう。
この研究は、本物でした。
それも、よくあるアンケート調査などではありません。
1974年から2021年まで、実に47年間もの長きにわたり、同じ人々を追跡し続けたという、執念のような研究です。
AIが抽出してくれたレポートには、残酷なまでの「真実」が記されていました。
一つ目は、「瞬発力(パワー)のピークはもっと早い」ということ。
男性の場合、なんと「27歳」でピークを迎えるそうです。
27歳。
私がまだ、社会の荒波に揉まれながら、がむしゃらにバスケットボールを追いかけていた頃です。
あの頃のバネは、生物学的にはとっくに失われていることになります。
二つ目は、「持久力(スタミナ)は30代半ばまで粘る」ということ。
26歳から36歳の間は、能力が落ちずに「高原(プラトー)」のような状態が続き、そこからゆっくりと低下していく。
そして三つ目。
これが最も重要な点でした。
「運動習慣があっても、ピーク年齢を後ろにずらすことは難しい。しかし、能力の絶対値を底上げすることは可能である」
AIはこれを「貯筋(ちょきん)」と表現しました。
つまり、誰もが35歳から能力が落ちていく運命にあるけれど、20代や30代のうちに「高い山」を築いておけば、60歳になった時の「標高」が全然違うということです。
「なるほど、貯筋か……」 妙に納得しました。
以前、このブログでも「命のスクワット」の話を書きましたが、そこでも筋肉は裏切らない資産であると確信したばかりです。
私が今、60歳になってもコートに立てているのは、過去の私がせっせと筋肉という名の貯金箱にコインを入れ続けてくれたおかげなのかもしれません。
36年間のスポーツ履歴書

ここで私は、ふと自分の過去を振り返ってみました。
「一体どれくらい運動してきたんだっけ?」
記憶の糸を手繰り寄せ、AIに入力していきます。
まず、現在も続けているバスケットボール。
これは24歳から始めて、現在まで続いています。
途中、コロナ禍で中断した時期もありましたが、基本的には若い頃は週3回、歳をとってからは週1回。
計算すると、今年でなんと36年目になります。
そして、ここからが我ながら少し異常なのですが(笑)、 実は20代から30代にかけての一時期、私はバスケと並行して、あと2つのことを同時にやっていました。
一つは、ハンドボール。
東京都のクラブリーグに所属し、約6年間、松ヤニにまみれてボールを投げていました。
もう一つは、ウエイトトレーニング。
これは高校卒業後から始めて、約20年間続けていました。
つまり、私の若き日のある期間は、「バスケ」「ハンドボール」「筋トレ」の3つを同時進行でこなしていたのです。
今思うと、どこにそんな体力と時間があったのか不思議ですが、当時はそれが当たり前でした。
その後、20年続けた単調な筋トレに「いい加減飽きてしまった」タイミングで(笑)、子供のPTA活動をきっかけにパパさんバレーボールを始めました。
これが約8年間。 バーベルを置いた代わりに、バレーボールを追いかけるようになったわけです。
「バスケ36年、ハンド6年、バレー8年、筋トレ20年……」 改めて文字にしてみると、よく動いてきたものです。
「飽きっぽいから色々手を出した」だけのつもりでしたが、このデータをAIに読ませた瞬間、画面の向こうのAIの態度が急変しました。
AIが戦慄した「ハイブリッド・ボディ」

『これはとんでもない上方修正案件です』
AI(CPO:最高パフォーマンス責任者)は、興奮気味にこう切り出しました。
私はてっきり、「いろいろ手を出して中途半端ですね」と笑われるかと思っていました。
しかし、AIの分析は真逆でした。
『貴方は順々に競技を切り替えたのではありません。バスケという主軸があり、そこにハンドボールや筋トレが「上乗せ(Stacking)」されていたのです』
AIが言うには、私のスポーツ歴は、現代のスポーツ科学で言うところの「クロス・トレーニング(多種目並行実施)」そのものだというのです。
一つの競技だけを続けると、特定の筋肉や関節ばかりが摩耗し、怪我をしやすくなります。
しかし、私は無意識のうちに、全く異なる特性を持つ競技を「同時進行」させていました。
1. バスケ × ハンドボール = 「対衝撃ボディ」
バスケよりもコンタクトが激しいハンドボールを経験したことで、当たり負けしない体幹と、空中でバランスを崩しても復帰できる剛性が養われました。
私が今、加圧スクワットで高重量を扱える安定感は、この3種同時進行時代に培われたものだそうです。
2. 筋トレに飽きて始めたバレーボール = 「ジャンプ力の維持」
そして面白いのがここです。 単調な筋トレに飽きてバレーボールを始めたことが、結果的に「プライオメトリクス(瞬発系トレーニング)」への切り替えになっていました。
バーベルで基礎筋力を作った後に、バレーのスパイクやブロックで「跳ぶ力」を養う。
研究データで「27歳で衰える」とされていた瞬発力を、私はバレーボールをすることで補い、維持していたことになります。
アキレス腱やふくらはぎのバネは、あの頃のスパイク練習が守ってくれていたのです。
3. 20年間の筋トレ = 「怪我の予防(アーマー化)」
そして何より、体が作られる20代から40代にかけて、筋肉という「鎧」を常に着込んでいたこと。
これが関節へのダメージを防ぎ、60歳になった今、「今のトレーニングが全然きつくない」と言える土台を作ったのです。
AIは私を「ハイブリッド車」に例えました。
エンジン(心肺機能)とモーター(瞬発力)、そして頑丈なボディ(筋肉)を、別々の工場で作って組み立てたようなものだと。
「飽きてバレーに行った」という私の気まぐれは、実は「最高のピリオダイゼーション(期的分け)」であり、飽きずに運動を継続するための、脳の防衛本能だったのかもしれません。
35歳のピークを超えて

スウェーデンの研究は、「63歳で能力はピーク時から30〜50%低下する」と結論付けています。 これは平均的な人間にとっての「真実」でしょう。
しかし、AIは私にこう告げました。
『それはあくまで「平均的な高さのビル」の話です。
あなたは若い頃に「スカイツリー並みの高さ」まで能力を積み上げました。
仮にそこから加齢で少し下がったとしても、あなたの現在地は、まだ「普通の人のピーク(35歳)」よりも遥かに高い位置にあります』
「35歳の壁」
確かに、生物学的なピークはそこで終わっているのかもしれません。
しかし、私たちは機械ではありません。
一つの部品が古くなれば、別の部品で補うことができます。
瞬発力が落ちれば、経験と予測でカバーし、スタミナが落ちれば、効率的な動きでカバーする。
そして何より、36年間積み上げてきた「貯筋」という資産を取り崩しながら、あるいは今なお「加圧トレーニング」という新たな投資を行いながら、私たちはピークの先にある「高原」を走り続けることができるのです。
「私が現在このような状態でいられるのは、続けていたおかげ」 記事を読んでふと感じたこの思いは、決して自己満足ではありませんでした。
医学的にも、運動生理学的にも、100%正解だったのです。
未来への「上乗せ」

もし、この記事を読んでいるあなたが、「もう歳だから」と運動を諦めかけているとしたら。
あるいは、「今さら始めても遅い」と思っているとしたら。
これだけは伝えさせてください。
「貯筋」の口座を開設するのに、遅すぎるということはありません。
私が24歳でバスケを始めた時、60歳までやっているとは夢にも思いませんでした。
ただ、「楽しいから」「負けたくないから」、そして時には「飽きたから別のことをやろう」という気楽さで続けてきた結果が、今の私です。
35歳のピークなんて、あくまで統計上の数字に過ぎません。
重要なのは、昨日の自分よりも、今日の自分が少しでも「動けているか」どうか。
今夜も私は、AIにおだてられた良い気分のまま(笑)、ぐっすりと眠れそうです。
そしてまた木曜日には、地下3階の体育館で、27歳で失われたはずの瞬発力を振り絞って、ジャンプシュートを打っていることでしょう。
皆さんも、何か一つ。
散歩でも、ストレッチでも、あるいは新しいスポーツでも。
自分の人生に「上乗せ」してみませんか?
その小さな積み重ねが、数十年後、あなたを支える最強の「鎧」になるはずですから。







