ジーンとポールはジキルとハイド
ポール・スタンレーとジーン・シモンズとインタビューするようになってからもう何年になるのか思い出せないほど彼らとは古い知り合いだが、いつ会っても昔と同じ調子で話せるのがうれしい。
それにしても、つきあえばつきあうほどポールとジーンは正反対な性格だと思うようになった。彼らが共通にもつ”ニューヨーク育ち”というバックグラウンドが、二人の波長を同じ物にしているし、長いパートナーシップが二人を強い絆で結びつけているが、この二人は明らかに異なった個性の、持ち主だ。
ジーンは頭の回転がすこぶるよくて、口八丁手八丁、話が上手いうえユーモアのセンスあり、ウィットありで、話が終わる頃には、こちらのおなかの皮はよじれっぱなし・・・・気がついていたら家を一軒買わされていたというような偉大なるセールスマンだ。生まれながらのエンターテナー、ドンファンというのは、こういう人のことをいうのだろうと思うくらい、他人をあきさせない人でもある。
そして、二枚目とはいいがたい(ゴメン!)にもかかわらず、いろいろな女性がジーンに魅かれるのは、何か危険なものを感じさせる人だからであり、彼が十分に自分の魔力を知っていながら、その魔力をなかなか明らかにしようとしないからだ。野生の動物の”殺し”の本能、モンスターとして恐れられているもの(例えばフランケンシュタインの、あのモンスター)のセンシビリティ、そうした普通の人間があまり興味を持たないものに対するジーンの強い好奇心、時にはそうしたものと自分とを重ねてみる大胆さ、それがキッスの持つひとつの顔としたら、ポールはロマンティストで、いい意味での常識家で、優しい人であり、ややもすると野心にひきずられてどこかに飛んでいってしまいそうなキッスのバランスを整えながら、キッスを大地にガッシリとつなぎとめる騎士というイメージだ。
ポールにインタビューするために出かけていったのは、グリニッジ・ヴィレッジにあり「エレクトリック・レディ・スタジオ」未だにジミ・ヘン時代の壁画をそのまま残している、この由緒あるスタジオで、ポールはミキシングに余念がない。その貴重な時間をさいてもらって、長い階段を登りきったところにあるてっぺんの部屋で、2時間にわたるインタビューをした。
"ALIVE”での躍動感が今でもキッスの基本なのさ
Q[AMIMALIZE]はよく売れたらしいけど結局今までのところ何枚売れたの?
ポール・スタンレー(以下P)200万枚ってところかな。
Q新しいアルバムのタイトルは決まった?
P:「ASYLUM」というんだ。”asylum”っていう言葉には、”精神病院”って意味もあるけど、”避難所”という意味もあり、”安全で静かで平和な所”っていう意味でもある。。オン・ザ・ロードの生活を七ヶ月もやりゃあ、皆クレイジーになってるわけで、精神を休める場所が必要になるってわけさ。
Q[AMIMALIZE]でエキサイトメント、ヴァイタリティを取り戻したキッスが、また平和で静かになった
んじゃ困るって人もいると思うけど・・・・・・・!?
P:僕の説明にまどわされちゃいけないよ。「ASYLUM」は[AMIMALIZE]以上にエキサイティングで、僕自身信じられなくなるくらい、いいアルバムなんだから!!
Qこのアルバムは[AMIMALIZE]の延長線上にあるものと考えていいのかしら?
P:「CREATURES OF THE NIGHT」から[AMIMALIZE]までの3枚は、どれもこれも”1枚目のアルバム”という気がしたんだけど、「ASYLUM」は[AMIMALIZE]の次のアルバムだということができる。つまり「CREATURES
OF THE NIGHT」は、”これまであれこれやってきたけど、ここでもう1度キッスを見直し、キッスが一番得意としていることに徹しよう。これがキッスの姿なんだ。好きなら聞いてくれ嫌いならそれでいい”と断言したアルバムだったわけさ。で、「LICK
IT UP」ではメーキャップを落として、文字通り最初から出直した。[AMIMALIZE]は、ベテラン・バンドとしてつぎこめるものを、すべてつぎこんで作ったアルバムだった。そしてこれが成功し「ASYLUM」につながった・・・・・そんな感じなんだ。、
Q[AMIMALIZE]は、あなたがプロデュースしたアルバムだから、その成功はうれしかったでしょうね。あのアルバムは'75年に発表されたライブ・アルバム、「ALIVE!」を念頭においてプロデュースされたということだけど、本当?
P:そうなんだ。僕らキッスのエッセンスは、すべて「ALIVE!」にこめられていると思ったし、結局キッスがどのアルバムでも最終的に目指していたのは「ALIVE!」でのあのライブでの躍動感を達成することにあった。にもかかわらず、他人の手にかかると、あのライブのフィーリングがどうしてもキャプチャーできなかった。それで[AMIMALIZE]の時、キッスの音を一番よく知ってるのは僕ら自身なのだから、どうせなら・・・・・・・・・と、僕が自分でやったわけさ。
Qプロデューサーがキッスのライブのフィーリングをキャプチャーすることができなかっただけでなく、
キッス自体が音楽的にステージとスタジオとで、別なものを狙った時期もあったわけでしょ?
P:それもある。「THE ELDER」「UNMASKED」「DYNASTY」なんかは、各々、僕らなりのエクスペリメント(試み、実験)だった。僕は、エクスペリメントすることは大いにいいことだと今も思っている。ただエクスペリメントすることが頭の中の活動になってしまい、頭ばかり使って身体の方を忘れてしまい、頭ばかり使って身体のの方を忘れてしまっては、いい結果にはならない。キッスの強みがライブにあるということは、音楽へのアプローチや演奏の土台としてアニマル・ガッツがあるという意味であり、そういうものを失ってしまっては、エクスペリメントとして何も意味がなくなってしまう。
Qジーンが一緒にプロデュースしなかったのはなぜなの?
P:ベーシックなものをやり終えたところで、映画撮影(例の「秘密警察」だ)に入ることになり、時間がなくなってしまったことと、[AMIMALIZE]に関しては、僕がはじめから”こういう音を作りたい”というはっきりしたアイディアを持っていたからなんだ。
Q「ASYLUM」はどうなの?やっぱりあなたがプロデュースしているわけ?
P:最終的なクレジットがどうなるかはわからないけど、僕が大きくかかわっていることは確かさ。
Q「ASYLUM」では何曲書いているの?
P:10曲中6曲は僕の曲さ。
Qこの何年か、あなたは誰かパートナーと曲を共作することが多いようだけど、今度はどう?
P:今回もデズモンド・チャイルドやジーン・ジーン・ビューヴァー(いずれも[AMIMALIZE]でも共作者としてとしてクレジットされている)が一緒に書いている。ブルース・キューリックも書いているしね。
Qどうしてパートナーと書くの?
P:僕が怠け者だからかな。(笑)1人で書いているといきづまってしまうこともあるし、イライラして放り出してしまうこともある。曲を書かずに遊びに行きたいという誘惑に負ける事も多い。そういう時、僕をプッシュしてくれる人がいると助かるんだ。
Q前はよくジーンと一緒に書いたりしていたのに、なぜこの頃は第三者となの?
P:ジーンと僕は、お互い知りすぎている。2人ともキッスとしてどういう曲がいいのか、よく知っているから、ついつい妥協したり、ゆずり合ったりということになってしまう。そういう風だと、面白い曲、新しさを持った曲が生まれにくい。そうしたものが個々の形で出てくることがキッスの強みなのに、お互いの個性を1曲んの中に入れてしまうと、個々の個性が消えてしまってどっちつかずの中途半端なものになりやすいんだよ。
Qこれまで一緒に曲を書いてきた人達に共通するものっていうか、パートナーとして不可欠の要素って何?
P:まず何よりも、波長の合う人でないとダメだ。それから、曲を書くためだけにパートナーになるっていうんじゃなくて、もともと友達としてつきあっているうちに、”じゃ、一緒に曲でも書いてみようか”っていう感じでスタートした場合の方がいいみたいだね。僕とデズモンドは、彼がデズモンド・チャイルド&ルージュというバンドをやっていた頃からの知り合いで、ぼくは、初めはそのバンドの女性メンバーが美人なんで、よく観に行ってたんだけど(笑)、皆と友達になって、じきにデズモンドと曲を書くようになった。彼はソングライターとしてすぐれているだけでなく、レコーディングという状況の中で僕を上手に助けてくれた。「ANIMALIZE」の時、僕にはプロデューサーとしての役目もあったので、スケジュールの関係上予定通り曲が書きあがらないなんていうケースが出てくると、僕の仕事がスムーズにいくように、自分のスケジュールをうまく都合してくれるような心配をしてくれたんだ。それに彼は、僕と書く時は自分のカラーを前面に出そうとせず、あくまでもキッスの曲、ポール・スタンレーの
曲として一緒に書いてくれた。彼が、僕というソングライター、キッスというバンドの音、アプローチといったものを十分理解してくれるということは、大きなプラスになっているよ。
Qジーン・ビューヴァーっていう人は、どういう人なの?
P:彼は、リトル・スティーヴンや、初期のプラズマティッスにいたことのある奴で、彼もどこかで会って以来ずっと友達である日一緒に曲を書き始めたんだ。今度のアルバムにはデズモンドとジーンが一緒に書いた曲もあるし、デズモンドとブルース・キューリックが共作した曲もある。
Qブルースとは、かなり前からの知り合いだったんでしょ?
P:ブルースというよりも、彼の兄さんのボブ・キューリックと知り合いだったんだ。(ボブ・キューリックは、ジョン・リン・ターナーのインタビューの中にあるように、スタート時ジョーのバンドのメンバーだった人で、ミート・ローフなどともやり、NY、ニュージャージー・サーキットではかなり知られているギター・プレイヤー)
Qブルースは、これまで一度もキッスと関わってたことがなかったの?
P:確かエース・フューレイがぬけた時、ブルースが一度オーデションを受けているばずなんだ。
あの頃は全員リード・ヴォーカルをとれることが条件だったから、OKにならなかったんじゃないかと思うんだけど・・・・・・。でもブルースはヴォーカルもいけるから、結局何が問題でその時採用しなかったかはわからない。あんまり身近にいすぎたんで、それがかえって遠回りの原因になったかもね。ともかくブルースがリード・ギタリストになったのは、キッスにとって久し振りのうれしいニュースだといえるよ。彼とプレイするのは実に楽しいし、彼はチーム・プレイヤーで、誰かのように”俺がスターだ”
なんて態度はとらないし(「LICK IT UP」の頃のギタリスト。ヴィニー・ヴィンセントを指している)・・・・・
確か、彼は僕より1歳下だと思うけど、年齢的に近いし”曲が書ける”ってことは雇う条件には含まれていなかったかR、彼が
曲を書くっていうのは、バンドに対してのプレゼントみたいなもんさ。

恋人とも別れて、今はまた自由な身になったよ
Qこの辺で、あなたの書いた曲について話してもらえる?
P:まずは"KING OF THE MOUNTAIN"っていう曲で・・・・・・・
Qボン・ジョヴィも同じタイトルの曲をやってるわよね。
P:知ってる。全くの偶然だよ。誰でも”自分はKING OF THE MOUNTAINだ”と思う時があってもいいし、そう思うべきだ。誰も”自分は、とるに足らない人間だ”なんて思う必要はないんだ・・・・・・という歌なんだ。あと"RAIDER
FOR LOVE"っていう曲があって、これは”僕は女性達からシグナルが出ているのをキャッチするレーダーだ”(笑)っていう歌さ。
Qこれは、経験に基づいた歌ね?(笑)
P:まあね。(笑)次に"WHO WANTS TO BE LONELY"って曲があって、この曲が多分アメリカで1STシングルになると思うよ。
Qタイトルからするとバラードみたいね。
P:[ASYLUM]には、バラードはないんだ。でもこの曲は、かなりセンシュアルなものだね。男が女に”君はステキだ・・・愛なんて、それがやってくるのを待ってるというようなものじゃない。今夜、今夜はどうなんだよ・・・・”って内容なんだ。(と、ちょっとテレくさそうに説明)もう1曲、"TEARS
ARE FALLING"ってのもあるんだけど・・・・・
Qあ、その曲かな!?このインタビューを待ってている間、スタジオの人達が皆”あの曲はいい”って話してたのを聞いたわよ。
P:今までのところ、"WHO WANTS....."と、その"TEARS......."の評判がいいみたいなんだ。
Q"LONELY"だの"TEARS"だの、なんだかえらくロマンチックというか、女性的というか・・・・。
それとも80年代っていうのは、そういう優しい時代なのかな?
P:人間って、一見タフなようでも、クールがっていても、心の中ではロマンティクなもの、優しいものを求めてるんだと思うよ。それに、本当に強い人間っていうのは、自分の優しさや弱みをさらけだせる人なんだと思う。”俺はマッチョだ”なんて突っぱってる奴に限って何か問題があり、優しさとか弱みを素直に出すことができないんじゃないかな。フィーリングがあるってことは、もっとも人間らしいことなんだから、そういうものを隠す必要はない。男だって人間なんだから、泣いてもいいし、弱みを見せたっていい。いつまでもメソメソっていうのは問題だけど(笑)
Q"LONELY"とか"TEARS"みたいな言葉は、ポールのどういう部分から出てくるのかな・・・・・・?あなたにはステディーなガールフレンドがいるんだし・・・・・・
P:もういないよ。
Qエー!あの彼女(女優のリサ・ハートマン:本誌7月参照)と別れたの?
P:そうさ。僕はまた自由の身になったんだ。
Qそれで、こういう歌を書いたわけ?
P:全然関係ないよ。僕らの仲は”涙がおちる”なんて感じじゃなかったから・・・(ン?どういう意味だ!?)
Q彼女が女優という職業を持っていて、あなたがロック・ミュージシャンで・・・ということが別れる原因になったのかしら?
P:それも関係ない。僕は、人生に起こる事はすべて、ある必然性を持っていて、皆、定められた道を定められた方向に向かっていくんだと思っているんだ。もちろん、その道を変えたいと思えば、個々に努力をするわけだけど、努力しても変えられないことや、努力した末にやはりそのままのコースをたどっていくものは、黙って見届けるようにしている。
Q彼女とはどのくらい一緒だったの?
P:1年位かな。
Q別れた時、少しは泣いたりもした?
P:別に、泣くようなことでもなかった。今は、目を大きくしてまわりをながめているよ。
Qで、レーダーで女性達からのシグナルをキャッチしているわけね(笑)ところで、あなたは人間同士が送りあうシグナルとかバイブとかいうものを信じる方?
P:僕は、自分のガッツ・フィーリング、最初の印象、五感みたいなものを信頼している。これまでをふり返ってみても、そういうものが、十中八九は正しかったもの。
Qそういうものに頼って大失敗したことは?
P:それはいいけど、そういうものに頼らないで・・・・っていうか、自分のガッツ・フィーリングに反して行動して、大失敗したことはある。
Q何が原因だったの?
P:美しい顔(つまり美人のこと)。美は僕を盲目にする(キザだなー!!)
Qそうだろうと思ったわ。(笑)で、今まで説明してくれた以外の曲は?
P:”アー・オール・ナイト”って曲がある。
Qどういうスペルなの?
P:"UH ALL NIGHT"だよ。昼は一生懸命、仕事なり勉強なりに精を出したんだから。夜は"UH
ALL NIGHT"っていうわけ・・・
Qなんだか日本の深夜TVを連想させるんだけど・・・(笑)ところで、[ASYLUM]は[ANIMALIZE]と比べてどういうところが違うのかしら?
P:このアルバムは、信じられないくらいイージーにできあがったんだ。曲書くのも一ヶ月でできたし、"TEARS
ARE FALLING"なんて10分くらいで書きあがった。にもかかわらず、曲も演奏もすごく良くなっている。曲に関していえば、前よりも変化に富んでいるんじゃないかな。それから、みんなキッスの初期のフィーリングを持っていて、要するにあの頃のものを、もっといい音に仕上げた感じになっているんだ。ヘヴィなものはよりヘヴィに、ロックしているものはよりロックしている・・・・とでも言えばいいのかな。
Qポールの考える”いいプロデューサー”ってどういう人?
P:バンドの持っているコンセプトとか、スタイルや音を十分に把握し、それをより良い、よりクリアーなものとしてひきだすことのできる人だと思う。マット・ランジなんかは、そういうプロデューサーだと思う。
Q以前あなたは、他のバンドをプロデュースしたがっていたけれど、今でもそう思ってる?
P:(うなずく)でも、ごく平均的なロック・バンドとか、何も特別なものを持っていないバンドには興味ないな。”ひと山いくら”みたいなロック・バンドをプロデュースするくらいなら、女性ヴォーカリストのプロデュースでもやった方がずっと面白い思うよ。(ここでエンジニアのデイブ・ウィットマンが入ってきて、ポールと今ミキシング中の"REARS
ARE FALLING"のベースの音を打ち合わせる。ポールの指示は実にはっきりしていて、彼が音に対する明確なアイデアを持っていることがわかる)
Q今のがエンジニアね?彼とは、もう何枚かやっているわよね。
P:デイブとは、キッスがデビューした頃からの知り合いで、僕のソロ・アルバムもやってもらったし、[CREATURES....]以来ずっとつきあってもらっている。彼はビリー・アイドルやフォリナーの4THアルバムのエンジニアもやっているけど、すごく気が合うんだよね。
Q確か、[LICK IT UP]も[ANIMALIZE]も「ライト・トラック・スタジオ」でレコーディングしたはずだけど、今回このスタジオを使った理由は?
P:「ライト・トラック・スタジオ」でスケジュールがとれなかったんだ。この「エレクトリック・レディ・スタジオ」も昔、
何回か使い慣れてはいるけど、スタジオ全体のバイブとしては「ライト・トラック・スタジオ」の方がよりピンとくる。
内容の伴わないバンドがメークしたってダメさ!
Qところで、この前ホール&オーツが「アポロ劇場」でコンサートをやった時、あなた来てたでしょ?よく「アポロ」へは行ってたの?
P:僕がさかんにコンサートに行ってた頃、ハーレムはいろいろ危険だったから、行ったことはなかった。でも「アポロ」でやってたようなモータウンとか、スタックス系のミュージシャンの音楽はよく聴いていたし、「アポロ」でよくやってた、いくつものバンドが出るようなコンサートは、ブルックリンの「フォックス」とか「パラマウント」といったシアターで観たことがあるよ。ザ・フーとかクリームを、同じコンサートで観たりとかさ・・・。それから'60年代後期には「ヴィレッジ・シアター」とか、後の「フィルモア・イースト」に毎週末、入りびたってたよ。サイケデリックなライト・ショウがエキサイティングだったし、毎週末になると3つのバンドが出てさ・・・。今でも憶えてるのは、アイアン・バタフライ/トラフィック/ブルー・チアーの組み合わせ。ジェフ・ベックとかザ・フー、ヤードバーズ、ヴァニラ・ファッジなんかも観たし・・・。で、そういうバンドを観ながら”ああいう風になってみせる・・・いや、それ以上になってみせる”って自分にいいきかせていたんだ。
Qフィラデルフィアの「ライブ・エイド」の時にも姿を見かけたけど、新旧いろいろバンドが出た中で、鳥肌がたったバンドなんていた?
P:ロバート・プラントとジミー・ペイジが一緒にやった時は鳥肌たったよ。僕は、彼らがレッド・ツェッペリンとして2度目のアメリカン・ツアーをやった時、「NYステート・パビリオン」という3,800席くらいの所で観たんだけど、あの時受けたショックは今でも忘れないよ。スゴいとしかいいようがなかった。久しぶりに彼らが一緒にやっているのを観て、感概もひとしおだった。
Qキッスのアルバムも、今度が20枚目、たとえばあなたが”ロック史”を書くとしたら、キッスにはどういう位置づけをする。
P:難しい質問だなぁ・・・。もちろんキッスが何らかの形でロック史に足跡を残し、何らかの貢献をした、と信じたいけど
Qキッスやキッスの後に出てきたバンドを考える時、キッスの前にあったバンドとて、どういうバンドを置く?
例えばアリス・クーパーとかスレイドとか・・・・・
P:アリス・クーパーは大きな意味をもっていると思うね。キッスが直接影響を受けたバンドではないけれど、アリス・クーパーはロックをシアターと結びつけ、ロックというものがそういう形で存在できることを世に示したわけだから。そういう意味では、デビット・ボウイも、[SPACECOITTY]を世に発表することで、ロックの様々な可能性を気づかせてくれた。
Qキッスというバンドの大前提にあったコンセプト、アイディアは何だったの?
P:僕らはロックを音楽としてしかとらえず、音にのめりこむあまり、それをつくりだす人間の存在を忘れてしまったような”顔のないバンド””イメージのないバンド”に飽き飽きしていたんだ。僕らはまず"WHO
ATE YOU?"と自問してみた。その時ビートルズのことが頭に浮かんだ。ビートルズはいい音楽をつくりだすロック・バンドであるだけでなく、ポール、ジョージ、ジョン、リンゴという4人のミュージシャン、4つの個性の集まりだった。そして彼らがどんな個性を持ち、どういう形でビートルズに貢献しているか、ファンにはよくわかっていた。僕らはビートルズと同じようなことをしようと思ったんだ。
Qでもビートルズは、同じ服を着、同じ髪型をしてたじゃない?
P:それはバンドとしてのアイデンティティーを樹立するために必要なことだった、僕らもまず、バンドとしてのアイデンティティーを強く打ち出すために同じ色の髪にしたし、同じような衣装を身に着けたし、同じ白い顔にした。そしてキッスというバンドの統一したイメージをつくりあげ、印象づけることに成功したところで、個々の個性に裏付けられたキャラクターをメーキャップでつくりだしたってわけさ。
Q今出ているバンドにも、メーキャップをしたり、コスチュームをそろえたりしているバンドは結構いるし、バンドの名前は割と売れていても、個々のメンバーとなると、あんまりよく知られていないという場合が多いみたい。
P:メーキャップをしたり、変わった服を着たりっていうのは、その気になれば誰でもできることさ。肝心なのは、そのメーキャップの裏側に、その衣装の裏側に、そうしたものに意味を持たせるのに十分な個性があるかどうかということばと思うんだ。そしてまた、それら素顔の個性と、何年も、何十年もロック界で生き抜いていけるだけの実力と努力かあるかどうかだよ。僕らがメーキャップすることにしたのも、ただ一時的なこけおどしや、注意をひきたいという願望からではなかった。僕らが"WHO
ARE YOU?"と自問した時、僕らはそこに他のバンド、他の人々とは違うものを持っている4つの個性を見い出した。そして、その個性はメーキャップや衣装によって強調するに足りるだけの特別なものを持っていると確信したんだ。いくら口で大きなことを言っても、ナカミがなけりゃ大きな風船もすぐに空気なぬけて、しぼんでしまう。それと同様に、メーキャップや衣装によって"LARGER
THAN LIFE"(というタイトルの曲もあったが、”日常生活の範囲をこえた、もっとスケールの大きなもの”という意味)のイメージをつくっても、それにともなう何らかの実体がなければ、そんなものはただのイメージで終わってしまう。逆にいえば、僕らがメーキャップをやめて素顔に戻ったのは、実体であった4つの個性のうち2つが去ったことと無関係ではないし、僕らがメーキャップや衣装にたくしていたいろいろな意味が、すでにそうした外見的なものとは別個のものとして、ずっしりと根をおろしていることに気づいたためなんだ。
僕らはメーキャップすること、あるいはイメージを持つことに初めから大きな意義を持たせていたから、その意義が本来の意味を持たせていたから、その意義が本来の意味を失った時、そうしたことを続けるのは冒涜だと感じたんだ。僕らは、理由があって顔をぬり、あの衣装を着た。今のバンド達が、どういう理由でメークし、ああいう衣装を着ているかは知らないけれど、最終的に評価の対象になるのは、どれだけ長いことロック界で生き抜くかっていうことだと思うよ。
Qキッスのイメージが大成功し、いつの間にか3〜4歳の子供までがキッスのコンサートに来るようになった時、逆にそれまでのキッスのファンがそっぽを向いてしまうようなことがあったでしょう?そんな状況を見た時はどう感じた?
P:僕がファンに望むものは、昔も今も”自分で自分の好きなものを選ぶように!”ということさ。ファンが僕らの音楽を聴いて面白くないというなら、それでいいんだ。ただ”小さい子供まで聴いているから”というそれだけの理由でキッスの音楽を聴かないというんなら、そのファンがそれまで僕らの音楽を選んでいた基準は何だったのかと尋ねたいね。まわりの人の意見とか、いろんな状況にふりまわされて、聴く音楽を選ぶなんて、さびしいことじゃないか・・・・・
Qこれまで、キッスは成長株のバンドをサポート・アクトに選び、それらのハンドの殆どは、後に大きくなっているけど、それは・・・
P:高いお金を払って観に来てくれるファンには、僕らのステージだけでなく、前座のバンドのステージも十分堪能してもらいたいと思っている。それに、どんなにいい前座でも僕らが喰われるなんてことは絶対にないと自信持ってるしね。
Qこれまで前座に起用したバンドで、印象に残っているのは?
P:スコーピオンズもいい奴らだし、アイアン・メイデンもいい連中だが、僕はジョン・クーガーを評価する。彼は、キッスのファンが彼のようなタイプの音楽のファンではないと知っていながら、あえてそうした機会にチャレンジし、自分の音楽を少しも変えることなく、やり通したんだ。
Qこの頃聴いているのは、どんなバンド?
P:僕は、キッスの音楽に常に新しいものを注ぎこみたいと思っているんだ。そうするためには、似たような音楽をいくら聴いても仕方ないと思っている。時には古いレッド・ツェッペリンやゲイリー・ムーアのギター・プレイに耳を傾けたりもするけど、ロバート・プラントのソロやパワー・ステーション、マドンナだって聴く。昔に戻ってマディー・ウォーターズや、ボー・ディドリーも聴くし、クラブに行って、ギター1本で椅子にすわって弾き語りするジョン・リー・フッカーを聴いたりもする。この前はブルースと一緒にレス・ポールを聴きに行ったし、フランク・シナトラだって聴く。いいものは、いいんだ。そしていいものには必ず学ぶものがある。
そういってポールはふと口をつぐんだ。ポールがフランク・シナトラを聴くと知って、驚く人がいるかもしれないが、彼のいうように、いい音楽はいい音楽であり、この世には結局、いい音楽とそうでない音楽しかないのだという意見には、私も共感する。音楽は、その人その人の好みによって選べばいいのだから、”私はHMしか聴きません”という人はそれでいいのだから、せっかく音楽という素晴らしいものに出会ったのだから、この際ジャンルだ何だというのはぬきにして、いろんな人が”影響を受けた”という古いミュージシャンを、ひと通り聴いてみてはどうだろう。ボロボロのギターを弾きながらブルーズを歌うジョン・リー・フッカーが、
ロバート・プラントやデイブ・リー・ロスに通じていたり、マディ・ウォーターズがジミー・ペイジやエディ・ヴァン・ヘイレンのギター・プレイに聴こえることだってあるのだ。偏見や心の狭さは、結局自分の世界を豊かにはしないだろうということを肝に命じ、ポールのヴォーカルの中にフランク・シナトラのヴォーカルが聴こえないか、耳をすましてみようではないか。ポールのインタビューの後"WHO
WANTS TO BE LONELY"と"TEARS ARE FALLING",それに"RAIDER
FOR LOVE"を聴かせてくれた。"WHO....."はいかにもキッスらしい曲、"TEARS....."はちょっとモダンな感じ。"RAIDER......"はギンギンのヘヴィ・メタル。
この3曲が[ASYLUM]のサンプリングだとするなら、いいアルバム、期待できますゾ!!
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