★先駆者にして、偉大なるマンネリ

「96年から97年にかけて回った再桔成ツアーでのマジックを、そのままブチ込んだようなアルバムさ」ギターのポールは『サイコ・サーカス』について、そんなふうに説明した。

オリジナル・キッスとして17年ぶりとなるこのアルバムはアメリカで圧倒的な支持を受け、顔に独特のペインティングを施した「キッス・マニア」を増殖させた。

「なーに、オレたち4人の存在そのものがマジックなのさ」と、ポールが言うと、もうひとりのリード・ギター、エースが冷静な口調でフォロ−してくる。「久しぶりにオリジナル・メンバーで作ったアルバムだったからね。オレたちが会わなくなってから、メンパーひとりひとりがミュージシャンとしてどれだけ成長したか、よくわかったよ。

もう一度、この3人のジェントルメンと仕事ができて、オレはこの上ない喜びを感じたね」確かに、工−スさんは舌出しジーンさんやアイドル系のポールさんと比較すると、ちょっと地味でしたものね。その気持ち、よくわかるような気がします。

「要は、だ!」と、ポールが自信満々に合いの手を入れる。「レトロな感覚ってやつに陥らないよう注意しながら、昔からのキッスの特徴、要素をいかに取り入れることができるかってやつさ。そこが肝心だってことだな。過去の再現じゃダメだ。過去という基盤の上に新しい何かを組み立てていかないとな。そして、その新しく組み立てたものを見て誰もがキッスだとわからくちやいけないわけだから、おまえ、実はけっこう難しい話なんだぜ」

ステージでは舌を出し、火を吐くものの、ステージを降りると突然、紳士に変わるジーンにも話を聞いてみる。「サイコ・サーカス」は聴きようによっては新人バンのデビュー・アルバムのようにも聞こえるだろ?そこが素晴らしいところなんだよ。アルバム全体にそんな雰囲気が漂っている。これはオレたちにとって新たなスタートとなる作品。まっさらからのスタートだからね」「マジックっていえば、アルバム・カバーもマジックだよね」と、ピーターが言う。「だってさ、ロックンロール史上初の3次元カバーなんだぜ!」確かに3ーDアートというのはよく耳にするが、アルバムのジャケットに使ったという話は間いたことがない。ファンを楽しませることが第一と考えるヤツらならではのお遊びだ。

★馬鹿げていても、やめられない面白さ

「オレたちは、なににつけても先駆者的存在だからな」とピーターは言う。それにしても、キッスはかなり3−Dにイレ込んでいる。アルバム・カバーだけじゃなく『サイコ・サーカス』のビデオも3−Dだ。「オレたちってさ、なんでもかんでもやり尽くさなければ気が済まないようなところがあるんだよ」と、ジーンが説明する。
「でも、それがキッス伝説Vの秘密なのさ。とにかく、とことんまでやってみる。オレたちはそんなふうにして、ずっとやってきた」

そうはいっても、キッスは天才的なビジネスマンでもある。『サイコ・サーカス』の
ビデオはこの先、すぐにでもMTVでオンエアされることになるだろう。でも、それは3−Dではないのだ。3−Dの舞台を見たければ、ヤッらのコンサートに出掛けるかビデオを買うしかない。

「MTVでオレたちのビデオを見て想像すればいいさ」(ピーター)
「ああ、想像力はすべての鍵だからな」(ポール)と、ヤツらは言うが、やはり実際にコンサートを覗いてみたいと思ってしまうのが人の常である。

キッスの最新ツアーは、昨年秋のハロウィンの夜、ロサンゼルスのドジャー・スタジアムから始まった。球場に設置された巨大スクリーン。観客には入口で3−Dメガネが配られる。3−D用の楽曲が始まる。スクリーンには3−Dの映像が映し出され、数方人の観客がメガネをかけて、その「マジック」に酔いしれる。ひとりメガネを外して周りを見渡せば、その光景は実に滑稽だ。まったく馬鹿げてる。第一、3−Dといったって球場クラスの巨大な会場ではさほどの効果は期待できないのだ。それでも観客は熱狂してlいる。恐怖のお気楽集団催眠状態。だが、もう一度メガネをかけて、周りに合わせて盛り上がっていくうちに不思議と楽しさが沸き上がってくる。

今回のツアーのもうひとつの目イペントは大晦日の夜に発表される(キッスCAR)のブレゼントだった。クライスラーのプリムス・ブローラー1999年型(日本円にして1千万以上の高級車!)をベースに、キッスならではのオプショナル・パーツを取り付けだもので、専用番号へ電話するだけで抽選でもらえるというファン・サービスだ。ポディ・カラーはブラック・クローム。後方にはトレイラーも接続することができるというところが、なんともアメリカらしい。トランクにはジーンのパニッシヤー・ベース、工−スのレス・ポール、ポールのPS2000、ピーター公認のドラム・マシンが入っている。

「トランクを開ければ、大音量で音楽を聴いたり付属のマイクで歌ったり、車内のジャックにギターをつなげて演奏することもてきるっていうわけさ。でも、走行中はダメだぜ」(ポール)「そこまでやるかって言われるかもしれないけど、その昔、オレたちはアルバムを発表するごとに必ずスペシャルな企画を打ち出してきた。ラヴ・ガンやタトウーとかさ。ステージで思いっ切り楽しむことが先決だが、それ以外にもファンに楽しんでもらいたい。それだけの話さ。だから、このキッスCARにしても、ファンにエキサイトしてもらうための手段。この手の話になると、オレたち、一晩中でも喋ってられるね。それほど興奮する企画だってことさ」(ジーン)

★ファン思うゆえにキッスあり

ライプ会場には、ジーンやポールと同じメイクを施したヤツがけっこう多い。衣装まで揃えて「なりきって」る連中も少なくない。そういう意味では、キッスは音楽を演奏する”動くアニメ”なのかもしれない。そしてキッスは、ファンが望むままに今でも火を吹き、血を流してみせる。ヤツらは永遠のマンネリでいることを誇りに思っているようにも思える。「いずれにしても、音楽上のインスビレーションは全部、ファンのみんなから与えられたものだからね」と、ピーターは言う。ジーンもその意見には賛成の様子だ。

「そうだね。ファンあってのオレたちだなんて言うと、ヤポったいメッセージに聞こえてしまうかもしれないけど、まさにそういうことなんだ。事実、オレたちはファンなしではやっでいけないんだよ。ファンなしではオレたちの音楽なんて無意味なのさ。この気持ちは絶対に変わらないだろうと思ってる。それどころか、再桔成ツアーに出て「サイコ・サーカス」を発表してから、その思いば前よりも強くなっているのさ」

ちょっびりしんみりモードに入ったジーンをポールが明るくフォローする。
「ファンヘの思いを言葉にするのは簡単だけど、オレたちは態度で示すことだと思ってる。アクション。それが大事なんだ。だからオレたちほ今でもこんなに巨大なブーツを
はいてプレイしてるってわけさ」

『サイコ・サーカス』に収録されている『ユー・ウォンテッド・ザ・ペスト』は、メンバー全員がポーカルをとる異色のナンバーだ。「ある意味では自伝的そして同時にファンについての歌だな。80年代、オレたちはずいぶんとマスコミに騒がれたし罵られたものさ。そのことをメンバーが代わるがわる歌ってるんだよ。でも、オレたちはいつだってファンに向かって歌ってきた。〈キミたちがいるからオレたちはついていく〉っていう歌詞そのままさ」(ポール)

「だいたい、再結成したことだって、ファンが求めたからこそ可能になったわけだしね」と、エースが言うと、ジーンが声色を変えて、重々しく、こう言った。

「キッスは、人々による、人々のための、人々のバンドなのだ!」

「まったく、ジーンは政治家への道を狙ってるな」と、ピーターが笑う。「オレたちはそんな立派なモンじやないさ」と、今度はポールが言う。「ま、キッスっていうのは小動物のようなもんだな。ほっとけぱ、どこに行っちまうかわからない。でも、21世紀が始まる瞬間は、どこかで思いっ切り特別なイベントをやってるはずだぜ」

自由の女神の前でのライプを全世界中継っていう噂は本当かもしれない。
「そうだな。とにかく特別なことをする。オレたちに不可能はない。それが「キッス哲
学なのさ」優しい表情の下、ジーンの目はマジだった。


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