俺は今、スピード・メタルのエネルギーに惚れこんでいるよ
僕のティーンエイジャーの頃のヒーローといえば、アリス・クーパーとキッス。それこそ僕にとっては、雲の上の人みたいな存在だった。彼らに直接会って話をするなんて、まさに夢に夢・・・・。ところがこの8月のある日、僕はこの2大ヒーローにたて続けにインタビュー出来ることのなったのだ。平常心でいろって方が無理。この気持ちわかって貰えるよね?わざわざスウェーデンはストックホルムからLAに飛んできた甲斐があるってもんだよ。で、早速お届けするキッスのダブル・インタビュー、まずはミュージシャンとしてだけでなく、俳優、プロデューサーとしても大忙しのスケジュールを送っている”1,000の顔を持つ男”ことジーン・シモンズ。ゆっくりと食事をとる時間さえなさそうな彼をキャッチ出来たのは、アリスの取材をしたしたその日の深夜のことだった。何よりも貴重な(!?)睡眠時間を割いて、快く彼はインタビューに応じてくれた。まずは今、彼が手掛けている仕事について・・・。
今度はエアロスミスのアルバムを手掛ける予定さ
Q相変わらず、随分と忙しそうですが・・・・。
G:そうなんだ。仕事があり過ぎるんだよね。(笑)
Q今、何をやっているのか教えて貰えますか?
G:ちょうど映画を2本撮り終えたところなんだ。1本は[WANTED DEAD OR ALIVE]というタイトルで・・・・
Q確か、アラビアのテロリストか何かの役をやっているんですよね?
G:そうだよ。それが11月に公開になる。もう1本は[TRICK OR TREAT]というやつで、御存知のとおりオジー・オズボーンも出てるよ。
Q確かもう1本[NEVER TOO YOUNG TO DIE]という作品もありましたよね?
G:そうそう、それも既に取り終えている。
Qということは、3本公開されるわけですね?どの作品の出来映えが一番いいですか?
G:[WANTED....]だね。ついでに言っておくとワーストなのは、[NEVER....]かな。あれは結構ヒドいよ。観るには面白い映画かも知れないけど、内容的にはちょっとね・・・・。
Q昨年の[RUNAWAY](日本でも「未来警察」のタイトルで公開されたトム・セレック主演の映画)と比べてみて、今回の3本はいかがですか?
G:全然似てないよ。役柄のタイプがどれもまるで違っているからね。[TRICK...]ではニューヨークっていう名前のDJの役を演じている。そう、[NUCLEAR]のニュークさ。こいつは善玉なんだ。かと思えば[WANTED...]ではテロリストの役なんだからね・・・(笑)
Q全作品を撮り終えるまで、どれ位の時間がかかりましたか?
G:ブラック・アンド・ブルーのアルバム[NASTY NASTY]をプロデュースしていたのと同じ時期に[TRICK...]と[WANTED...]の2本の撮影を平行して行っていたんだ。
Qそんなに沢山のことを一度にやりこなすなんて、ちょっと考えられないんですが・・・.
G:ハハハ・・・朝の5時から夜の8時までは映画を撮って、9時からバンドと一緒にスタジオ入りして、夜中の2時までレコーディング・・・っていうスケジュールの繰り返しだったよ。
Qということは、睡眠時間はたったの3時間?
G:まあ、充分だとはいえないよね。撮影のためにノースカロライナに飛ばなけりゃならないこともあったし・・・ホントに忙しかったよ。
Qインタビューなんかしてる場合じゃありませんね。(笑)ブラック・アンド・ブルーを手掛けた後、他に何かプロデュースの仕事はあったんですか?
G:実は今、日本のバンドのアルバム・プロデュースに取りかかっている最中なんだ。多分彼らはグループ名を変えることになるだろうと思うんだけれどね・・・・。[8BALL(エイト・ボール)]っていうんだ。
Q以前は何ていう名前だったんですか?
G:フラットバッカー
Q聞いたことのない名前ですね。
G:それはキミが日本人じゃないからさ。(笑)キミはストックホルムから来たんだろう?スウェーデンには何かいいバンドあるかい?
Qヨーロッパとか?
G:俺は彼らのことを聞いたことあるよ。(笑)とは言っても、大半のアメリカ人はヨーロッパを知りはしない。
Qもうレコードも出てるし、MTVでも流れているというのに?
G:そうだよ。まだまだ無名に近い状態さ。何しろ毎年、年間3,000枚ものレコードが出ているんだから無理もない話だよ。
Qなるほど・・・。では他の日本のバンドについてはどうですか?ラウドネスとか、アースシェイカーとか・・・。
G:アースシェイカーは、アメリカでは名もないバンドさ。ラウドネスについては、もうかなり広く知れ渡っているけどね。
Q[8BALL]のメンバー達は、レコーディングのために日本からやってきたわけですか?
G:そう、最初にまずNYにやってきて、今はLAに移ってる。で、現在作業中というわけ。この仕事が終わると・・・・まぁ一ヶ月くらい後のことになるだろうけど、いよいよキッスのニュー・アルバムのレコーディングに入ることになると思う。その後は、エアロスミスの新作をプロデュースする予定さ。
Qエアロスミス!?彼らがプロデュースを依頼してきたんですか?
G:いや、レコード会社(=ゲフィン)からきた話なんだ。だから、まだ彼らと話をしたわけじゃない。
Qいつになったらゆっくり眠れるんでしょう?
G:さぁね。(笑)
[ASYLUM]が3作目だと思ってる子供も大勢いる
Qところでその、肝心のニュー・アルバムについてなんですが、今回はどういった作品になりそうですか?
G:簡単に言えばKICKIN'ASSなアルバムさ。21枚目のレコードになるわけだけど、よりハードで、より速く、よりエネルギッシュな作品にしようと考えている。
Q曲作りの方は進んでいますか?
G:もう沢山書けてるよ。昨日はブルースと一緒に、凄く速い曲を作った。まるでスピードメタルみたいな感じのやつをね。
Qスピード・メタル?キッスの従来のスタイルからは、たいぶかけ離れているんじゃありませんか?
G:いや、そうは思わないよ。エネルギーの面から考えればスピード・メタルやスラッシュ・メタルも素晴らしいと思うし。それはテンポが速かろうが、遅かろうが関係無い。スピード・メタルと、いわゆる普通のHMや一般的なロックン・ロールとの間になる大きな違いは、ひとつだけさ。スピード・メタルに、いいソング・ライティングは必要ない。リフとスピードさえありさえすればね。とにかく俺は、エネルギッシュなHMが好きなのさ。

Q確かにネネルギーの面では凄いですよね。
G:そこに俺達なりのソング・ライティングが加われば、更に凄いことになるだろう?
Qなるほど・・・。今回もまた、キッスのメンバー以外の誰かと共作したりしているんですか?
G:ジェイミー・セント・ジェイムス。ブラック・アンド・ブルーのシンガーさ。俺自身でも書いているし、他にもいろいろなライターと一緒に書いていて、現時点でも30曲くらいはある。ポールも16曲くらい抱えているはずだよ。
Qポールとの共作は?
G:1〜2曲ってところかな。俺達はもう、ずっと一緒にやってきているし、お互い深く知り過ぎているから、一緒に作業するのは逆になかなか難しいことでもあるんだ。だから、フレッシュなアイディアをどんどん取り入れていくためにも、外部のソング・ライターを起用するわけだよ。
Q今回もプロデュースは自分達で・・・?それとも誰かに依頼する予定がありますか?
G:多分誰かを起用することにはなるだろうと思うけど、誰になるかはまだわからない。
Qいつもグループ自身でプロデュースまでこなしていると、進歩を止めてしまうことにもなりかねませんよね。例えばディオみたいに・・・。勿論、最近のキッスがお粗末な仕事をしているととは思いませんが・・・。
G:要するに、何かきらめきみたいなものが必要なわけだよ。長い間仕事をやっていればいるほど、フレッシュな状態でいるのは難しいものなのさ。最初のレコードを作るのはむしろ簡単なことなんだ。自分の内側にあるものを、そのまま出せばいいんだからね。でも年を重ね、何枚もアルバムをリリースしていくにつれて、自分に追いついていくのが困難になってくるんだ。新しく作った曲が、今までに作ってきた曲のようには聴こえなくなってくる。自分の中に、それほど沢山のものがあるとは思わないけど、それを出していかねばならないし・・・それが仕事だからね。
Qあなたとポールは、いつもバンドにとってのエンジンのような役割を果たし、キッスを引っ張ってきたわけですが、これまでに”もうだめだ”とか”やっとここまでたどり着いた”などと思ったことはありませんでしたか?
G:決してないね。”もうこのバンドもオシマイだ”なんて口にするのは簡単なことだけど、俺の場合は、それに対する答えはいつでも"NO"さ。バンドをやっていくことが、俺自身にとっては"TOO
MUCH FUN"なんだからね。
Qもしよろしければ、アルバムに収められる予定の曲のタイトルを教えて貰えませんか?
G:"WHAT GOES UP","HUNGER FOR YOUR LOVE","DIRTY
BLOND","SCRATCH AND...."とにかく沢山あるから全部思い出すのは大変だよ。(笑)
Qそういえば、今までのキッスの映像を集めたビデオ・ソフトを発表する予定があるそうですね。
G:そう。もう作り終えたよ。多分ニュー・アルバムと同じ頃にリリース出来ると思う。
Q古い映像まで収められているというのが、僕みたいな昔からのファンとしては嬉しいですね。
G:そうだろうね。でも、それはキミが今のキッス・ファンよりずっと年上だからだよ。今、キッスのコンサートにやってくるファンの中には、「僕、キッスのレコードなら全部持ってるよ」と言いながら、[LICK
IT UP]と[ANIMALIZE]、[ASYLUM]の3枚だけしか知らないような子供達が大勢いるんだ。本気で俺達が3枚しかアルバムを出していないバンドだと信じているんだぜ。(笑)だから、その他にも20枚ものレコードが出ていて、かつてはメイク・アップしてステージに立っていたなどと知らされると、彼らはマジに驚くんだ(笑)まぁ当然のことなのかも知れない。いつだって第一印象というものは、後から与えられるイメージよりもずっと強烈な意味を持っているからね。彼らにとってキッスの最初の印象は”メイクしてないバンド”だったわけさ。
Qビデオに収められている古いマテリアルには、どんなものがありますか?
G:[LICK IT UP]以降の2枚のアルバムからのクリップ以外にも、[CREATURES OF
THE NIGHT]のアルバムに入っていた"I LOVE IT LOUD"のような、メイク・アップ時代のものも収められているし、中にはモノクロのフィルムもある。ブラジルでのライブ・シーンなんかも含まれているよ。
Qそれは確か、ヴィニー・ヴィンセント在籍時のライブでしょ?
G:そう。エース・フレーリーにヴィニー・ヴィンセント、マーク・セント・ジョン、そしてブルース・キューリック・・・。
歴代4人のギタリストが全員登場する構成になっているよ。勿論ドラマーにしても、エリック・カーだけでなく、ピーター・クリスも出てくる。要するに、とにかくキッスの総てが飛び出すようになっているわけさ。
Qビデオによる”キッスの集大成”というわけですね?
G:まぁ、そんなところだね。古いビデオも山ほどあるけど、中には皆が見たこともないようなものまであると思うよ。なにしろキッスが初めてビデオ・クリップを作ったのは75年のことなんだからね。
Qそれは、どの曲のビデオだったんですか?
G:"C'MON AND LOVE ME"と"ROCK AND ROLL
ALL NITE"だよ。両方ともライブで撮った。
Qそれから、も10年以上も経つわけですからね(笑)ともあれ、ビデオとニュー・アルバムを楽しみにしてますよ。
G:THANK YOU.
Qそれに、いくら仕事が楽しくて、それが自分にとってやりたいことばかりだとしても、時には"NO"と言わなくちゃならない時もありますからね・・・。仕事のし過ぎに注意してください!(笑)
G:そうなんだよね・・・。本当はオートグラフとも仕事するはずだったんだけど、何しろ時間がないからね・・・。断ってしまった。
Qたまにはちゃんと眠ってくださいよ。(笑)きょうは、夜遅いのにどうも有難う。
G:こちらこそ。キミこそ寝ろよ(笑)
●文面からもわかるように、今回のインタビューア、アンダース・テングナーはスェーデン人。LAに飛んでキッスを取材し、その後母国に1日だけ戻り、9月初旬にはヨーロッパに同行して来日していた・・・という、食欲とバイタリティのカタマリのような人。
●ジーン・シモンズが過去にプロデュースを手掛けた作品には、ウエンディ・O・ウィリアムズの[W.O.W.]('84),キールの[THE
RIGHT TO ROCK]('85)と[FINAL FRONTIER]('86)などがある。ブラック・アンド・ブルーの[NASTY
NASTY]は10月25日に日本でもリリースされたばかり。
●9月に出たばかりの[ALIVE!]に続いて、[ALIVE2]と[DUBULE
PLATINUM]もCD化されることが決定した
●9月下旬、ポリスターに入ったテレックスによると”1987年の2月までは、レコーディングに入らない”とのこと。
●ロン・ネヴィソンは1度、キッスのアルバム・プロデュースを断っている。 |